富士通とパナの合弁、「半導体再浮上」に挑む 京セラから転じた西口CEOが再建策を語る
富士通とパナソニックが、半導体のシステムLSI(大規模集積回路)事業を統合した新会社、ソシオネクストが2015年3月、正式に始動した。
システムLSIとは、半導体の複数の機能をワンチップに集結させた製品。経営破綻したエルピーダメモリ(現マイクロンメモリジャパン)が手掛けるDRAMや、赤字体質に苦しむルネサスエレクトロニクスのマイコンと同様、過剰品質にこだわる一方、価格競争に吞まれ、不採算にあえいだ“敗戦の歴史”を抱えている。
両社が統合を発表したのは2013年2月。「(出資を要請していた政府系の)日本政策投資銀行が支援を渋り、交渉に時間がかかった」(業界関係者)が、2014年4月、2社と政投銀の間でようやく統合に合意。エルピーダメモリ、ルネサスエレクトロニクスに次ぐ“日の丸半導体”としての再出発が決まった。
出資比率は富士通4割、パナソニック2割、政投銀4割。巨額の設備投資がかかる生産部門を切り離し、設計・開発に特化した「ファブレス」として今後生き残りを図る。
ただ、道のりは険しい。両社が手掛けていたのは、自社の家電製品向けなど、特定の用途を想定したカスタム品がメイン。システムLSIの市場では、米クアルコムなどが手掛ける、不特定のユーザー向けの汎用品が主流となっており、カスタム品市場は今後も縮小が予想される。「生き残りには汎用品へのシフトが必要だが、これまで決められた仕様どおりにカスタム品を作っていた両社の技術者が、汎用品をゼロから設計できるのか疑問」(半導体に詳しいアナリスト)など、厳しい見方が飛び交っている。
再建を担う会長兼CEO(最高経営責任者)に就任したのが、元京セラ社長の西口泰夫氏だ。一度敗戦に追い込まれたシステムLSI事業をどう建て直すのか。西口CEOに直撃した。
技術力はあるが、経営につなげられていない
――あらためてCEOを引き受けた経緯は?
京セラの会長を退任し、研究者として過ごしていたとき、両社の統合のアドバイスを求められたのがきっかけで、CEOへの就任を打診された。
富士通とパナソニックのシステムLSI事業を合わせ、設計開発のエンジニア中心に約2600人の従業員がいる。この人たちに、もう一度世の中に役立つ存在になってほしいという思いで、CEOを引き受けた。おそらく、この会社を立ち上げなかったら、みんなバラバラになっており、日本の最先端の半導体技術も流出していた。それを防ぎたかった。親しい友人はみな「やめろ」と言ったが、誰かがやらなければという思いで引き受けた。
もちろん、道のりは厳しい。ただし世界中でシステムLSIが行き詰まっている産業かというと、そうではない。海外勢でうまくやっている企業もある。日本勢は技術力こそあるが、残念ながらそれを経営に活かせなかった。だからこそ、やりようはあると考えた。
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