1回勝って終わる人と「勝ち続ける」人の差 世界一プロ・ゲーマー梅原大吾の「仕事論」

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「なんでそこで目の前の小さな勝利をとるかなあ……やめなければ地力つけるチャンスだったのにな」っていう人をたくさん見てきたので、それは教訓になっていますね。

「7:3のバランス」がいい

――梅原さんにも、結果が出ない「ためている期間」というのはあるんですか。

あります。しばらく負けが続いても、いずれ「ため」が爆発して、ダムが壊れるときみたいに結果がではじめる時期がくる。それを経験的に知っているので、あえて「ためる期間」をつくるようにしています。

ただ、結果が出ない時期は誰でも不安になると思います。「目先の勝ちを取りにいかないぞ!」と我慢だけをして、爆発するのをひたすら待っていると、そこにいくまでにもたないということもある。特に会社員などであれば、一定期間に結果を出さないといづらくなるとか、そういう話もよく聞きます。

そのために、「小さなヒット(勝ち)」をある程度飛ばしておく必要があると思います。格闘ゲームでいうと、1つの勝負で全部が全部時間をかけて試したい「挑戦」だけをしていると成立しなくて、最低限これくらいは勝てるだろうという、「基本になる動き」を7割つくっておく。そして、残りの3割を改良の余力として残しておくんですね。

これは、プロとしての仕事を成立させるために必要な作業だと思います。7を地道にやりながらも、3で試していくという感覚です。

――7:3というのがいいバランスなんですね。

若い頃は7を捨てて3の部分だけやろうとしていたときとかもありました。でも、折り合いをつけなきゃいけないんですね。バランスですよね。一方で、あまり7のほうばかりやっていると、10年間やったけどぜんぜん上手くなってないというようなこともおこってしまうんですよね。ゲームの世界で、そういう人を何人も見てきました。だから、「3」が大事なんです。

――2015年も大活躍の1年でした。最近日本でも、「ゲーム業界」が注目されてきていると伺いました。

僕がゲームを始めたころ以来の、20年ぶりの波が来ています。ネット上で再生数の多い動画は、ゲームが圧倒的に多いようです。

プレイヤーにもスポットライトが当たっている時代です。ゲーム、エンタメの魅力って「人」でしかありえない。どんなに盛り上げようとがんばっても、魅力的な人材がいないとどうにもならないと思っているので、僕もいいことだと思います。

これはテレビでもプロレスでも同じで、面白い人、「スター」がひとりでもでてきたら、一気に盛り上がるんですよ。

「面白い/面白くない」というのは人にめちゃくちゃ依存するんだっていうのが、動画を自由に配信できる時代になって証明されたと思います。中にいる一員としては、ゲーム業界に、面白い人たちがまたたくさん集まってきて、しばらくゲーム離れしていた人たちもまた戻ってくるようになればいいな、と思います。 

(撮影:今井康一)

梅原 大吾 世界一プロ・ゲーマー

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うめはら だいご

1981年、青森県生まれ。日本初のプロ・ゲーマー。

14歳で国内最強となり、17歳で世界大会で優勝。その後、一度はゲームの世界を離れ、介護職員として働いていたが、2009年の大会優勝をきっかけに復活。世界的ゲーム機器メーカーのMad Catzとプロ契約を締結する。同年8月「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロ・ゲーマー」としてギネスに認定。

世界のゲーマーたちの間でもカリスマ的な人気を誇り、The Beast(野獣)と呼ばれる。2013年5月にはニューヨーク大学にプロのゲーマーとして初めて講師として招かれた。麻雀でもプロ並みの腕前。
著書に『勝ち続ける意志力』『勝負論』(小学館新書)、コミック『ウメハラ FIGHTING GAMERS!』(KADOKAWA)がある。

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