中国人は、なぜ米国の不動産を狙うのか 購入金額は米国人住宅購入者の3倍以上

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中国からは世界中の国や企業に資金が流れ込んでおり、不動産投資もその一環だ。フィッチレーティングの推計では、6月までの1年間で、5900億ドルが中国から海外に出ていったという。詳細なデータは12月にまとまる予定だが、第3四半期にはこの金額は史上最高となりそうだ。これまでは、通常は年間で2000億ドルを超えなかった。

中国からの資金の増大には、いくつかの原因がある。

活発な投資は始まったばかり?

過去6年間、中国政府は経済を刺激するため、国内の現金を増加させた。その結果、海外で動かせる余剰資金が生じることとなった。また、個人がより簡単に多額の資金を海外に移動できるようにもなった。規制の多い、同国の金融システムの自由化の一環だ。さらに中国政府は、企業に対する規制も緩和している。たとえば、保険会社は資産の15%まで海外で投資できる。その結果、商業用不動産の購入が急増している。

中国企業はアメリカの有名物件に投資を行っている。たとえば、ニューヨークのゼネラルモーターズ(GM)・ビルディングや、ウォルドーフ・アストリア(ホテル)などだ。こうした状況は、1980年代に日本人が米国の商業用不動産を高値で買っていたことと比較されている。

だが、この活発な投資は、まだ始まったばかりなのかもしれない。昨年末の時点で、中国の保険会社はわずか1.44%しか海外に投資していない。

「中国人は慎重なのだ。これから先は、巨額の資金が西側に向かってくるだろう」。こう話すのは、ブラックストーン・グループのCEO、スティーブン・シュワルツマンだ。同社は民間としては全米で最大規模の不動産投資を行っている。「中国政府がもう止めるべきだと思うまでは、資金の流入は増加し続けるだろう。彼らは、蛇口を開いたのだ」。

(執筆:Dionne Searcey記者、Keith Bradsher記者、翻訳:東方雅美)

© 2015 New York Times News Service

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