J.フロント、「爆買い」牽引に死角はないか 10月上旬、国慶節の免税販売はどうだった?
大丸と松坂屋を主体に、子会社・パルコなどを抱える、J. フロント リテイリングが中間期決算(2015年3~8月)を発表。本業が順調に推移していることを示した。
売上高は前年同期比2.8%増の5733億円で着地。3月は前年に消費税増税前の駆け込み消費があったことで、大丸・松坂屋は23.0%減に落ち込んだが、4月は23.0%増と挽回。5月以降は一度も前年同月を下回ることなく推移した。営業利益は広告宣伝費の管理などを徹底し、18.0%増の217億円だった。
通期営業益予想は、期初時点の450億円から470億円(前期比11.5%増)に引き上げ、6期連続の増益かつ最高益を見込む。純利益に関しては大丸心斎橋店の本館建て替え(2015年末で営業終了)や、パルコ千葉店の閉店(2016年11月)に伴い特損を計上するが、繰延税金負債の取り崩しによる押し上げ効果が上回り、27.7%増の255億円を計画している。
心斎橋店の免税品販売は5倍超に拡大
本業好調を支えるのは、富裕層による高額消費と訪日中国人による爆買いだ。中でも大丸・心斎橋店は、3~8月期の売り上げが前年同期比15.2%増と、最も高い伸びを見せた。大阪の心斎橋は大丸のほかにも、ユニクロ、ドン・キホーテなど、中国人に人気の店が集積。京都で観光してから心斎橋でまとめ買いし、関西国際空港から帰国する、というルートが確立されている。心斎橋店の免税品売り上げは前年同期比5.2倍と急拡大し、売り上げに占めるシェアは20.8%に達した。
他方、大丸・東京店や松坂屋・名古屋店は、免税品売り上げシェアがそれぞれ3.3%、1.0%と低いものの、国内富裕層の高額消費の恩恵を享受。前年同期比売り上げで、東京店は3.7%増、名古屋店は0.1%増と、プラスを維持した。
気掛かりなのは国内中間層の消費が回復してこないことだ。郊外店は売り上げ規模が小さく、同社の業績に与える影響は都心店に比べて軽微なものの、軒並み前年同期比マイナスに沈んだ。賃金上昇は一部企業に限られ、大部分の世帯では家計に余裕を感じられる状況ではない。山本良一社長は、「消費の2極化が個人の中でも生じている」と分析。富裕層ではなくても、自分の趣味やこだわりの商品にはおカネをかけるが、それ以外に関しては徹底的に節約するといった具合である。中間層の奪い合いはより熾烈さを増している。
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