南氷洋での調査捕鯨は、百害あって一利なし オーストラリアとの同盟強化のほうが重要
12月18日、東京で日豪首脳会談が行われ、安全保障分野で両国が協力を深めていくことが決まった。両国は中国の脅威を重視し、中国との軍事的な対峙も決意している点で共通している。他の多くのアジア諸国が対中融和を優先する中、お互いに数少ない同盟国候補であり、安保分野での協力深化は妥当な結論だ。
特に日本とオーストラリアは、中国の外洋海軍力への問題意識で完全に一致している。焦点となっている南シナ海問題でも中国による内海化を防ぎ、航行と上空通過の自由を最優先するスタンスである。
しかし、両国の間に大きなリスクが存在している。それは日本が進める南氷洋における調査捕鯨だ。これは百害あって一利もないものであることを後述する。
オーストラリアにとって南シナ海が防衛の第一線
まず、両国の利害の一致についてみていく。
南シナ海防衛に対するオーストラリアのやる気に疑いはない。同国は、伝統的に「南シナ海を防衛の第一線」と考えている。かつての軍国主義日本や国交正常化以前の新中国に対してそうであったように、南シナ海でアジア人勢力の南下を食い止めるという発想がある。
これはかつての政策でも明らかである。1960年代にはベトナム戦争に参戦し、1970年代にはニュージーランドと一緒にシンガポール、マレーシア、ボルネオ島のブルネイの防衛にも参画した。これらは敵対勢力による南シナ海支配を許さず、南下を拒否する決意の現れである。
今でも南シナ海への関与は続いている。オーストラリア軍はかつては台湾海峡、今では人工島での自由航行の確認を行っている。また、ブルネイとの協力関係は維持されており、共同演習も続いている。そして、南シナ海展開のため長距離・長期間行動ができる日本のディーゼル潜水艦を買おうともしている。
だが、この同盟関係に水を差しかねない問題が、南氷洋における調査捕鯨再開の動きだ。
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