これに対して、アメリカ、イギリスなど、市場志向が強い国の経済パフォーマンスはすぐれなかった。アメリカでさえ、連邦政府へ権力が集中し、巨大企業が経済を支配した。
日本経済はもともと市場中心の構造だった。それが、戦時期の要請に対応して作られた「戦時総力戦体制」で、大きく変わったのだ。金融では、それまでの直接金融中心の体系から間接金融への転換が、政府主導で強制的に行われた。電力も戦前は多数の企業が市場で競争する産業であったが、戦時体制の中で国策企業への転換が行われた。この体制は、40年代頃に形成されたという意味で、「40年体制」と呼ぶことができる。
この体制が戦後も生き残り、高度成長の実現に大きな役割を果たしたのだ。40年体制の強さをはっきり示したのが、石油ショックであった。イギリスやアメリカが、石油ショック後にスタグフレーションに落ち込んだのと対照的だ。
バブルは、金融における戦時体制が生き残ろうとして失敗した結果である。それは、40年体制が崩壊するときに発した最後の輝きだったといってよい。
市場機構を使える企業や国が発展する
80年代に生じた技術体系の転換は、市場の活動の優位性を高めるものであった。だから、市場メカニズムをうまく使える企業や国が発展し、それができない企業や国は停滞し、没落する。そのことが、90年代以降の世界経済で現実に生じた。
本連載では、これまで日本、アメリカ、中国の企業を中心として、世界経済の変転を見てきた。そこでの観察からいえるのがこのことだ。
変化をうまくとらえた典型例として、アップルとホンハイ(フォックスコン)の共同作業を挙げることができる。グーグルもそうだ。
アメリカ経済は、もともと市場志向が強い構造である。したがって、アメリカ型経済の優位性が今後も続くだろう。実際、図は中国の躍進を示すだけでなく、アメリカ経済が依然世界をリードして成長していくことを示している。