こうして、21世紀はアメリカと中国の時代になるわけだ。両国間の関係がどうなるかは、世界経済の動向に大きな影響を与える。将来の経済問題を考える際の大前提は、世界経済がアメリカと中国で動かされるという認識だ。それを前提にして世界戦略が考えられなければならない。
そして、米中とどのような関係を築くかはどの国にとっても大きな問題だ。TPPの問題は、本来はこうしたパースペクティブの下で考えられなければならなかった。昨年、TPPについて議論された際に、そうした視点があったか否かは疑問だ。
80年代に技術体系の大転換が起きた
中国が今後も高い経済成長を続けると予測されるのは、その成長メカニズムが、新しい技術体系とあっているからだ。農業経済が工業経済に移行するとき、一般的に成長率が高まるが、それだけではない。
1980年代以降に支配的になり、現在の経済活動を支えている基本的な技術体系は、第一には情報処理技術における分散処理、第二には生産体系におけるモジュール化の進展を中心的要素としている。
これは、80年代頃までの技術体系からの大きな変化であった。それまでは、情報処理においては大型コンピュータに見られる集中型処理が中心であり、生産体系においては1企業または企業グループ内の垂直統合が中心であった。このため、製造業を中心として、経済活動の集中化が進展し、巨大企業が経済を支配したのだ。この時代を象徴するものは、IBMのメインフレーム・コンピュータ・システム360だ。
日本では垂直統合型の系列企業集団が形成された。市場でなく組織の力が強い点ではドイツも似ている。
国全体が一つの組織である社会主義国家は、この当時の技術体系にもっとも適した体制であった。70年代頃まで、ソ連は宇宙開発と軍事を中心として西側諸国を圧倒した。概して、「市場」とは逆の方向を向く企業や国が強かったのである。