やたらと「兼務」、今どき会社員たちの苦悩 人事は断れない、さあどうする?

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ちなみにこの会社は中途採用をしないので、欠員となったポストを埋めるのは社内の誰かでしかありえません。最低でも3年は兼務が続きそうな気配に、Sさんの不安は募るばかりです。

兼務というとき、会社をまたいで兼務になるケースもあります。たとえば、本社で課長をしながら、グループの子会社では部長を兼務するといった場合などです。

「便宜上の兼務」と聞かされたのに…

親会社と子会社の仕事を兼務するTさんは、まさにそれを経験しています。当初は「子会社の監督をするため便宜上の兼務でしかない」と聞かされたのに、経営会議への参加や部下の人事評価もすることになったり。想像したより負担は相当なものになることも少なくありません。

子会社とはいえ、従業員が相当数いて、その組織の長となれば、責任もそれなりのものになります。しかも、子会社の部長と飲みにいって、何気なく聞いた年収にびっくり。なんと自分よりも高いのです。

「私より200万近くも多く給与をもらっていることがわかりました。本社から兼務で派遣された部長なので風当たりもきつく、仕事量もそれなりにあって、それなのに安い給料とわかって気が滅入ってきました」

Tさんはそう嘆きます。ただ、だからと兼務への不満を、上司や人事部に言うつもりはないようです。ここでの仕事ぶりが評価されて、本社の部長になることを期待しているからです。

Tさんのような理由で、つらい兼務に耐えている人は少なくないかもしれません。でも、不満がはっきりと出てこないからと、兼務を自由自在に発令していいのでしょうか?

原則として、従業員は会社の人事を断ることはできませんが、兼任によりどうしても物理的・時間的・経済的に無理な面が出てきたら、

まずは「拒否」ではなく事情を説明して「陳情」するべきかもしれません。陳情とは実情や心情を述べることであり、文句ではありません。そうした姿勢であれば、角を立てずに話し合いができるかもしれません。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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