ちなみにこの会社は中途採用をしないので、欠員となったポストを埋めるのは社内の誰かでしかありえません。最低でも3年は兼務が続きそうな気配に、Sさんの不安は募るばかりです。
兼務というとき、会社をまたいで兼務になるケースもあります。たとえば、本社で課長をしながら、グループの子会社では部長を兼務するといった場合などです。
「便宜上の兼務」と聞かされたのに…
親会社と子会社の仕事を兼務するTさんは、まさにそれを経験しています。当初は「子会社の監督をするため便宜上の兼務でしかない」と聞かされたのに、経営会議への参加や部下の人事評価もすることになったり。想像したより負担は相当なものになることも少なくありません。
子会社とはいえ、従業員が相当数いて、その組織の長となれば、責任もそれなりのものになります。しかも、子会社の部長と飲みにいって、何気なく聞いた年収にびっくり。なんと自分よりも高いのです。
「私より200万近くも多く給与をもらっていることがわかりました。本社から兼務で派遣された部長なので風当たりもきつく、仕事量もそれなりにあって、それなのに安い給料とわかって気が滅入ってきました」
Tさんはそう嘆きます。ただ、だからと兼務への不満を、上司や人事部に言うつもりはないようです。ここでの仕事ぶりが評価されて、本社の部長になることを期待しているからです。
Tさんのような理由で、つらい兼務に耐えている人は少なくないかもしれません。でも、不満がはっきりと出てこないからと、兼務を自由自在に発令していいのでしょうか?
原則として、従業員は会社の人事を断ることはできませんが、兼任によりどうしても物理的・時間的・経済的に無理な面が出てきたら、
まずは「拒否」ではなく事情を説明して「陳情」するべきかもしれません。陳情とは実情や心情を述べることであり、文句ではありません。そうした姿勢であれば、角を立てずに話し合いができるかもしれません。
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