さらに、現預金、債券、不動産などの資産に「財産税」を課しました。税率は財産に応じて25〜90%に設定され、富裕層はほとんどの資産を国に納めなければならなくなったのです。これは、インフレ抑制のためだけではありません。政府は、戦時中に発行された大量の国債や、復興のための復興債を償還しなければなりませんでした。償還できなければ、債務不履行(デフォルト)になってしまいますからね。
そこで償還のための原資を調達するため、財産税を課すことで国内の富裕層から資産を没収したというわけです。ところが、これだけ大胆な施策を行っても、インフレはまったく収まりませんでした。GHQは最後の策として「ドッジ・ライン」という金融政策を行います。
中でも功を奏したのは、「緊縮財政」です。緊縮財政とは、国の借金を減らすため、歳入を増やし歳出をできるだけ減らすこと。特に、当時行われた緊縮財政は、「歳入に見合った歳出しかしない」という厳しい内容でした。ここでようやくハイパーインフレが抑えられたのです。
日本が今のところ破綻しない大きな理由
戦後の日本経済を振り返ると、財政赤字だけ見れば対GDP比200%を超えた時点で預金封鎖が起こっていたことが分かります。繰り返しになりますが、今はそれをはるかに上回る水準です。それでもなお、今の日本が財政破綻しないのはなぜでしょうか。一つは、日本国債の9割強が国内で消化されていること。もう一つは、経常収支が黒字だからです。
要するに「国民の預金で賄っている上に、海外から稼いでいるから、巨額の財政赤字を抱えていても破綻はしないだろう」という信用があるからです。これが日本国債の価値(格付け)を支えています(現状の日本国債の格付けはおおむね「A1」で、上から5番目です)。
現在の日本が戦後の混乱期と大きく異なるのは、当時の日本は経常赤字に苦しんでいたということです。しかし、このところ経常黒字は稼いでいるものの、貿易赤字が続いていることに加え、高齢化の影響で貯蓄率はマイナスとなっています。さらには財政赤字額が増加しつつあり、いつまでその大半を国内で賄えるかは不明です。
後編では、日本でいつ財政破綻の危機がやってくるのか、ハイパーインフレの目安となる指標について解説します。
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