パズドラとモンストが追い落とされない理由 その文化と歴史を理解しないと本質を見誤る
一般的にゲームの代表と言われてきたソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の「プレイステーション」や任天堂「Wii」のような家庭用ゲーム機においては、ゲームは最初に購入する際にゲーム1本分のお金を支払い、あとは無料でプレイできるのが一般的です。
当然、一般的なゲーム会社は発売当日から直後にどれだけ大量にそのゲームを販売するかに全力を投入します。発売から時間が経てばたつほどゲームの新鮮さは薄らぎますし、中古品が市場に溢れることになるからです。ゲーム会社側は発売日までにゲームを頑張って開発し、発売したあとは基本的にはそのゲームの追加開発には注力せず、次の新しいゲームの開発にまた全力を投入します。
従来のソーシャルゲームと呼ばれたガラケー向けのゲームは、比較的こうした従来型のゲームと同じような傾向の延長線上のマインドセットにあったといえます。当時のガラケーのブラウザを使ったゲームでは、あまり複雑なゲームを構築することができないため、基本的には単純なクリックをし続けるゲームが次々に開発され、一つの人気ゲームの人気がすたれる前に次のゲームを開発して投入する、というサイクルがかなり速いペースで繰り返されていました。
それに対して、ガンホーはPCオンラインゲームで培った、家庭用ゲームとはまったく違う文化を持ち込んでスマホゲームに参入してきたという点が重要なポイントでしょう。
PCオンラインゲームにおいては、毎月ユーザーにお金を支払ってもらうために継続的に開発をし続けることが必須になります。
たとえば、ガンホーが運営するPCオンラインゲームの「ラグナロクオンライン」は10年以上ものあいだガンホーの売り上げに貢献していました。ガンホーには、こうした一つのゲームを長くユーザーに楽しんでもらうためのノウハウや文化があるからこそ、短期的なブームで終わりがちなスマホゲーム業界において、パズドラが3年以上もトップの座を争い続けることができているともいえます。
顧客との直接のコミュニケーションに力を入れている
こうしたほかのスマホゲーム会社に比べるとガンホーの独特なアプローチは、パズドラの運営方針の細かい部分にも出ています。
9月にパズドラの運営会社であるガンホーの社長室の橋本裕之氏のプレゼンテーションを聞く機会がありましたが、その場でも強調されていたのは、「ガンホーはユーザーとの直接のコミュニケーションに力を入れている」という話でした。
たとえば象徴的なものとしてはガンホーではユーザーサポートも丸投げせずに自社で運営しているようで、公式アカウントに200万人を超えるフォロワーがいるツイッターやニコニコ生放送のような顧客との直接コミュニケーションができるソーシャルメディアの活用にも注力されています。リアルイベントにも力を入れており、ガンホーフェスティバルというイベントは全国9カ所をまわり11万人もの参加者を動員しているそうです。
さらに特徴的なのは、ガンホーではあえて短期的に売り上げが上がりすぎないよう、有料アイテムを多めに配るなど、短期的に儲けすぎないことにも気を配っているという逸話があります。
スマホゲームの各社がビッグデータ分析を行うことで、いかにユーザーから効率的に課金することができるかを日々模索しているのは有名な話ですが、その技術が進みすぎた結果、コンプガチャ騒動に代表されるような多額の課金をするユーザーが出て社会問題化してしまったのは記憶に新しいところでしょう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら