インフルワクチンは「鼻から」が効果的? あの痛みから解放される人も

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日本では、インフルエンザの予防接種は腕に打つ注射タイプが一般的で、フルミストは承認されていない。接種はあくまでも自己責任。万一、重い副作用が出ても国の補償を受けることはできないが、5年前からフルミストを扱う東京都内の輸入代行会社の担当者はこう話す。

「受注本数は毎年、倍増傾向にあります。特に昨年と今年は問い合わせも多い」

年齢制限のないワクチン開発中

おりつこどもクリニックでも、2年前の仕入れ本数は100本だったが、3年目となる今シーズンは、2回にわけて計400本を確保した。それでも、予約開始をホームページで告知した途端に電話が鳴りやまなくなり、1日たたずに埋まってしまった。なかには、茨城県から受けに来る人もいるほどだ。

「注射を嫌がる子どもの接種がしやすくなった。インフルエンザの予防の選択肢が増える」

と折津院長は話す。

こうした需要の高まりを受け、企業も動いている。

第一三共は今年9月、アストラゼネカとの間で、アストラ社傘下の米国企業が生産するフルミストの国内での開発、販売に関するライセンス契約の締結を発表。最終の臨床試験を終えて国への申請準備を進めており、数年以内の商品化をめざしている。

国内ではここ数年、毎年2千万本以上のインフルエンザワクチンが接種されているものの、依然として年間1千万人以上が罹患(りかん)し、昨年は1130人が亡くなった。前出の長谷川部長は、フルミストなどの経鼻ワクチンの「感染阻止力の高さ」を改めて指摘。普及によって、気軽に予防接種を受けられるようになったり、効果が表れやすくなったりして、インフルエンザにかかる人や重症化する人が減ることを期待しているという。

フルミストは使用年齢が限定されているが、長谷川部長らはすべての年齢を対象に投与できる経鼻ワクチンも研究中だ。

「インフルエンザに感染した場合、重症化しやすい高齢者や乳幼児などハイリスクな層にも使うことができ、副反応をできるだけ少なくしたワクチンを開発したい」(長谷川部長)

「鼻にシュッ」で子どもの泣き声が消える日も近い。

(文:編集部・山口亜祐子)

※AERA 2015年12月21日号

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