インフルワクチンは「鼻から」が効果的? あの痛みから解放される人も

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インフルエンザの予防接種が変わる?(写真:Rina / PIXTA)
冬はインフルエンザの季節。予防接種はもはや恒例行事だが、その光景は変わりつつある。「腕にチクッ」から「鼻にシュッ」へ。もう、泣かずに済む。

 

「お鼻にシュッで終わるよ。せーの! スーッと吸って」

この間、わずか十数秒。あまりのあっけなさに、チクッと痛い注射を警戒していた子どもはきょとんとしている。

11月下旬のある土曜日。東京都港区のおりつこどもクリニックで、折津友隆院長が手にしていたのは、米国で「フルミスト」と呼ばれているインフルエンザの経鼻ワクチンだ。人さし指ほどの長さの棒のような容器を鼻に差し込んで、弱毒化したウイルスを直接スプレーする。

小さい子どもも1回接種で済む

国立感染症研究所の長谷川秀樹感染病理部長によると、鼻からワクチンを接種すれば、まさにウイルス感染の「現場」となる鼻やのどなどの粘膜そのものに抗体ができる。そのため、腕に注射するより感染阻止力が高くなるという。

ただ、フルミストは日本国内で普及している不活化ワクチンと違って、生きているウイルスを使う生ワクチンなので、鼻水や微熱など、インフルエンザのような症状が副反応として現れる可能性があるという。

昨年からこのクリニックで、2人の娘にフルミストを接種させている女性会社員(42)は言う。

「子どもたちが全然怖がらないし痛がらない。13歳未満なので、注射は2回接種していましたが、鼻の場合は原則1回で済むと聞いて去年から連れてきている。仕事もしているし、大助かりです」

フルミストは、米国で2003年に承認され、現在は4種類のインフルエンザウイルスを含むワクチンとなっている。米国では、ぜんそく患者や妊婦などを除く健康な2~49歳までの人に投与が認められており、欧州やカナダ、イスラエルでも承認されている。販売元であるイギリスの製薬会社アストラゼネカによると、米国での承認以来、世界で1億本以上が出回っているという。

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