(第56回)金利変動に脆弱な日本の銀行資産構成

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いずれのメガバンクも、保有国債残存期間の短期化をはかっており、2年程度にまでなっていると言われる。これがデュレーションであるとして計算すると、長期金利が1%上昇した場合には、残高の2%程度の損失が発生することになる。

三菱UFJの場合、「その他有価証券」の保有総額が約75兆円なので、1・5兆円程度だ。これは、年間業務純益を超える額である。

株価純資産倍率(PBR)が、メガバンク3グループとも0・5~0・6倍台という非常に低い値になっているのは、おそらくこのためだ。PBRとは、企業が持っている資産価値と現在の株価の水準の比率である。この値が0・5ということは、その企業のすべての株を買い占め、その後に会社を解散して資産を売却すれば、投資額の2倍の資金を回収できることを意味する。こうしたことになるのは、資産内容が時価評価ほどにも評価されていないことを意味する。

邦銀の低い収益率は構造的な要因から

以上で見たのは資産の構造だが、利益率の観点から見ても、日本のメガバンクには問題が多い。12年3月期決算でのROA(総資産利益率)を見ると、三菱UFJが0・46%、三井住友が0・37%、みずほが0・30%である。これに対して、シティグループは0・57%、HSBCは0・63%、JPモルガン・チェースは0・83%だ。

利益率が低くなる第1の原因は、資産が国債保有に傾斜しているため、預貸率が低いことだ。米銀の預貸率は86%程度と言われるが、三菱東京UFJ銀行の場合、11年度で61・4%である。

第2の理由は、低金利政策のため、利ザヤが縮小せざるをえないことだ。米銀の預貸金利差は6%程度と言われるが、三菱東京UFJ銀行の場合、1・33%だ。こうしたことからわかるように、邦銀の利益率の低さは、マクロ経済的な条件がもたらす構造的なものである。

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