(第56回)金利変動に脆弱な日本の銀行資産構成

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これは課税所得となるが、売却するまで実際の課税はなされないので、売却した場合の税額を負債として認識し、「繰延税金負債」として計上する。そして、残りを含み益とする。

たとえば、評価額が5万円増加した場合、借方の「投資有価証券」に5万円、貸方の「その他有価証券評価差額金」に3万円、「繰延税金負債」に2万円計上する(実効税率が40%の場合)。

増える国債保有と極めて低いPBR

バブル崩壊後、日本の大手銀行は、融資を減らし、他方で国債保有を増やしてきた。

三菱UFJについて見ると、12年3月末で、資産総額は約218兆円。その内訳は、貸出金が約84兆円、有価証券が約78兆円だ。そのうち、「その他有価証券」が約75兆円、うち国債が約48兆円である。このように、かなり国債に傾斜した構造になっている。

こうなったのは、日本経済のマクロ的条件の影響が大きい。資金需要が盛り上がらず、他方で財政赤字が拡大し、国債の大量発行が続いているからだ。

こうして、上に見たように、保有有価証券の値上がり益が、年間純利益に匹敵するほどの額になる。つまり、金利が変動すると、資産額が大きく変動するわけだ。これまでは金利が下がってきたからいいが、これが逆転すると、資産が減少する。11年度においては、業務純益に匹敵するほどの評価益があった。事態が逆方向に動けば、業務純益を吹き飛ばすほどの損失が発生しうるわけだ。

どの程度の影響があるかを正確に把握するには、「デュレーション」という概念を用いて計算する必要がある。これは、債券がキャッシュフローをもたらすまでの期間を、キャッシュフローの現在値で加重平均したものだ。債券価値の下落率は、(1+利回り)の下落率にデュレーションを乗じたもので近似できる。

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