再上場目前のJAL、ANA・自民党が反発 突きつけられる難題

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 また、法人税免除の問題もJAL一社のために税制改正を行うことは現実的ではなく、結局、JALは“無傷”のままでいられそうだ。

しかし、そのことがむしろ問題を複雑化させそうな雲行きである。まず、ANAは建前と本音が見え隠れしている。オモテの主張としてはガイドライン作りを要望しているが、実際はそれが困難なことを承知しているため、現実的な果実として2014年度の羽田空港の国際線発着枠増加の際、自社に有利な配分を暗に求める意味も含んでいるようだ。

この国際線発着枠の配分は来年秋をデッドラインに国交省内で決められる。これまでは均等配分だったが、今回ANAへの傾斜配分が実現すれば、首都圏利用者の利便性が高い羽田の長距離国際線はドル箱であるだけに実利は非常に高い。

一方、より混迷した行方となりそうなのが、自民党PTや国交省の要請のほうだ。JALに対して直接、ガイドラインや税制改正での対応が困難な中で、公共インフラとして地方路線の拡充を求める姿勢を鮮明化している。

先の自民党PTでも「JALの損益分岐点が下がり、再度展開できる路線もあるかと思うので追求していきたい」(国交省)、「再上場の条件として、地方路線をしっかりと守っていくのかを明確に答えていただかないと納得がいかない」(自民党議員)などの発言が相次いだ。

しかし、これはJALにとって受け入れがたい要請だ。そもそも政治の要請で地方の赤字路線を多く抱え込んだのが経営破綻の一因だった。破綻後は国内線3割をカットし、現在の中期計画でも5年後の国内線供給量を3%減と抑制し続ける方針。むやみな地方路線の拡充は採算重視に舵を切った経営改革を否定するようなものだ。

 自民党PTでは「かつての保護行政から競争促進策に転換している中で、不採算路線に対する補助をしないと民間企業は誰も飛ばさなくなる。補助のないままに競争政策を推進するのはおかしい」との意見も少なからずあった。そこまで航空行政のグランドデザインを描いたうえで地方路線の拡充を要請するなら話は変わってくるが、現状の財源不足の中でJALに地方路線の負担だけを求める懸念はぬぐいきれない。

6月下旬の会見で「(業績の)数字だけで不公平だとする指摘は受け入れがたい」とANAに反論したJALの植木義晴社長。政治の要請にどう対応するのか、上場前の難題が突き付けられつつある。

(野村明弘 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済2012年7月21日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

 

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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