人事が注目する「学生のウソ」を封じる面接法 経団連「指針」にも盛り込まれた"成績表活用"

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このような質問に対しては、学生は嘘をつくことが非常に困難です。なぜなら成績表には、取得したすべての授業の科目名とその評価(信頼できるかは別にしても、他者評価であることは事実です)が書かれているからです。当然ながら、取得していない授業を取得したとは言えませんし、取得した授業を取得していないとも言えません。

リシュ面では「嘘」がつけない

たとえば、英語が重視される企業を受けるからといって、「学生時代は英語に力を入れました」と嘘をつけるでしょうか。実際に力を入れていなければ、会話が多そうな科目が少ない、初級・中級程度の授業が多い、成績がそれほどよくないなど、嘘であることがすぐにわかります。

また、銀行などの金融機関に入りたいからと、「金融には前から興味があったので、『金融論』など関連する授業には力を入れていました」と嘘をつきたくても、授業の内容を説明するように求められれば、すぐに嘘がばれてしまうはずです。

授業に関する質問を面接の「最初の5分」に持ってくることにも、意味があります。

面接の冒頭で成績表を見ながら質問するため、学生は「脚色できない」と感じ、「話を盛る」意欲がそがれてしまいます。その結果、その後の質問に対しても、脚色しないで話すようになる学生が多いようです。

実際、リシュ面を導入したあるメーカーの面接官は「目の前に成績表があるので、嘘や脚色ができないと思うのでしょう。すべての学生が素直に脚色のない感じで話してくれるので、面接がスムーズにできました」と語っています。

新卒採用にも「エビデンス」を

もちろん中には、せめて嘘をつける質問だけでも嘘をついて、自分を良く見せたいと考える学生もいると思います。ですから、リシュ面においても、学生の嘘を完全に封じ込めることができるとまでは言えません。ですが、だからといってこの面接手法に意味がなくなるわけではありません。

従来のサークルやアルバイトに関する質問では、学生の回答が事実かどうかを判断するのは困難でした。これは見方を変えると、人材採用という経営上の重要課題を判断するのに、「エビデンス」がまったく重視されていないということになります。

たとえばこれが、販売戦略についての意志決定だったらどうでしょうか。エビデンスもなしに伝聞だけで意志決定をするなど、考えられないのではないでしょうか。

リシュ面は、不完全ではあるものの、人材採用において「エビデンス」を活用できる手法です。今後ますます、その重要性が増してくるものと考えています。

辻 太一朗 大学成績センター代表

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つじ たいちろう / Taichiro Tsuji

1959年生まれ。京都大学工学部卒業。リクルートで全国採用責任者として活躍後、1999年アイジャスト創業。2006年リンクアンドモチベーションと資本統合、同社取締役に就任。2011年、NPO法人「大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会(略称DSS)」設立。2014年、大学成績センター設立。著書に『なぜ日本の大学生は、世界でいちばん勉強しないのか?』(東洋経済新報社)などがある。

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