茂木健一郎、「今の人工知能には弱点がある」

人間の味方にするには何をすべきか

今どの土地にも属さないクラウドコンピューティングがもてはやされている。アマゾンはアマゾンとしてどこでも同じサービスだし、ツイッターもフェイスブックも土地と関係ない。ところが、そういう時代にこそ風土や土地性がものすごく大事になってくる。日本の雰囲気もずいぶん変わってきた。2~3年前まではグローバル化ばかりがいわれていたが、ふと気づいてみたら、今ものすごくローカルなものが人気だ。

人工知能がこれだけ発達してグローバル化が起こっていることは事実なのだが、そのときに日本人が無理して「グローバル人材」になることはなく、むしろ風土や土地性に根差した、腰を落ち着けた営みが大事な時代なのだ。

──今の状況には両面がある?

茂木 健一郎(もぎ けんいちろう/1962年生まれ。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、英ケンブリッジ大学を経てソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。「クオリア」(感覚の質感)をキーワードに脳と心の関係を研究するとともに、評論、小説などにも取り組む。

数学者の新井紀子さんと話をしていて納得した変化に、「新・大学は出たけれど」がある。中途半端なホワイトカラーがしていることは人工知能が代わりにかなりよくできてしまう。それを担ってきた層の必要性がなくなってきた。野球やサッカーと同じように、学力のほうも本当のトップクラスしかいい仕事に就かない、あるいは就けなくなるのではないかという予想ができ、すでにそれは起こり始めている。

学力という意味では中途半端に勉強ができてもしょうがない時代だ。それこそ動植物のある分野の専門家として、あるいはユーチューバーとして名を成す。そういう従来の学力では測れないニッチの仕事がたくさんできている。そこそこの大学に行き、そこそこの仕事に就けるという時代は終わり始め、そういう変化を人工知能が促そうとしている。

人間にしかできない「意識的な選択」の重要性

──自動運転車も話題です。

人工知能の研究をよく知っている人ほどコンサバティブな見方になる。SFの世界だとすでに人工知能が知性を持ち始めているが、それはかなり難しい。

自動運転に詳しい人に聞くと、一般道での自動運転は最後には人間が介入してオーバーテイクする機能が残るだろうと予想している。人間は意識的に何かを選ぶときには慎重な選択をする。そういう機能が人工知能に搭載されないと、安全は確保されないかもしれない。子どもが飛び出してきたときにブレーキをかけたら、後ろを走る2輪車がぶつかるかも。子どもを優先するのか衝突を回避するのか。人工知能がアルゴリズムで計算したとしても、無意識だとそこに重みはない。意識的に選択することで選択の質も上がる。

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