だが、自国が侵略の犠牲になっているとしてプーチンが闘争の姿勢を公にしたのは、ロシアがウクライナに干渉し、2014年3月にクリミアを併合したときだ。クリミアでの疑惑の住民投票により同地域のロシア支配が強く支持された直後にプーチンは、西側が「われわれに何度も嘘をついて背後で決定を下し、既成事実を突きつけた」とテレビ演説で語った。「NATOが東方に拡大して境界に軍事施設を配置したため、これは起きたのだ」と。
それ以来、プーチンは、クレムリンの世界的な行動力をシリア侵攻などによって誇示することで、ロシアは単なる「局地的な力」であると評価したオバマに対抗しているように見える。
だがプーチンは、トルコでのG20サミットでは従来とは大いに異なる態度を見せた。「反テロでの協力を提案した。残念ながら以前は米国内のパートナーに拒絶されたが、(現在は)手を携えて効果的な戦いを行うことが可能だとの認識に皆が達しようとしている。パートナーたちがわれわれとの関係を変えるべきだと考えるのなら歓迎する」。
プーチンの提案の裏にあるロジックは明白だ。ロシアはクレムリンの政治的な主導権をウクライナで確立させるとの目標を達成した。彼の現在の目標は、西側を説得して対ロ制裁を解除させることだ。
シリアでの「汚れ仕事」引き受けます
パリでのテロ事件は、シリアでの軍事作戦を通じて西側の利益に寄与する機会をプーチンに与えた。つまり、ロシアは、自国の勢力圏(であるシリア)でイスラム国を攻撃するという、汚れた役割を担おうというのだ。
プーチンは外交面でも譲歩を始めている。パリのテロ事件の2日後の11月15日のウィーンでの会議ではロシアと米国が、シリア騒乱に関する立場の違いを完全に越えて、2017年の早い段階でシリアの新政権を選挙によって樹立するとの流れに同意したもようだ。
米国と欧州の同盟国は、クレムリンへの多大な影響力を突然手に入れて利用することに弱気になるべきではない。西側にとっての健全な戦略は、直ちに制裁を解除することなしに、自らを世界的に偉大なパワーだと認めさせたいクレムリンの望みを利用することだ。
ロシアがミンスク合意を遵守して国境から軍を撤退させ、現地で国際基準に沿った選挙の実施を補助するように仕向ければ、手詰まりになっているウクライナ東部での紛争は解決する可能性がある。
プーチンがウクライナでの協力を通じて好意的な姿勢を見せた場合、西側は見返りとして一定の譲歩を考えるだろう。イスラム国との戦いにロシアが参加するとともに国際社会のルールを守ることに対して、そうした見返りを与えるのは割に合っているかもしれない。
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