「コミュ障」東電の伝達力は改善しているのか 東電改革のキーパーソンが語る3年間の成果

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コミュニケーションにおいて、東電には2つの修正すべき点があった。一つは前述の通り、すべての情報が集まるまで外部に発信しないことで、世間は東電の「情報提供が遅い」と不満を持っていた。もう一つは、われわれがタイムリーな発信を要請したら今度は、すべての情報を右から左に流すようになったため、世間が内容をきちんと理解できなくなってしまったことだ。

そこで私は、情報発信は一般の人にもわかる言葉や方法を用いて、タイムリーに行うようアドバイスした。私自身はエンジニアではないが、彼らが伝えようとしていた内容は理解できたので、それをどうやって一般の人たちがわかるように書くかを手助けした。私は英国でも似たようなことをしていたし、世界の多くの企業に同様のアドバイスをしてきた経験がある。

もう一つ、私の重要な役割は、この問題に対する女性の理解を深めることだと思う。実のところ、英国でも米国でもフランスでも、そして日本でも原発にもっとも声高に反対しているのは女性だ。なので私は、女性、しして母親の視点から、日本の女性や母親に原発のメリットを語りたかった。

情報発信も「過ぎたるは及ばざるがごとし」

――ご自身の取り組みによって日本女性の原発に対する考え方が変わった実感はありますか。

そうだと良いのだけれど。女性である私を、重要性の高い監視委員に任命したのは、東電の経営陣が非常に先進的で勇気があるからだ、と同時に理解してもらえればありがたい。私を任命したことは、東電自体も女性の声を気にしている表れなのだ。

――東電のコミュニケーション力はこの3年間で改善したでしょうか。

かなり改善したと言える。当初は私でさえ、汚染水の処理、ひいては廃炉について何をやっているか理解するのが難しかった。東電のプレスリリースがあまりにもテクニカルだったためだ。私はSECにいたときに「すべてディスクローズすることは、何もディスクローズしないのと同じ」とよく言っていたが、同じことが起こっていた。

「過ぎたるは及ばざるがごとし(Too much is too little)」は情報発信にも当てはまる。その後少しずつ、発信のタイミングは早まった。発表対象の事実や数値がこれまでの流れの中でどういう意味を持つのかも、わかりやすく説明されるようになってきた。

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