人口オーナス社会が到来、需給両面の活性化に加え、社会保障の抜本改革急げ
少子高齢化や人口減少が本格化してきた今、「人口オーナス(重荷)」対策が注目されている。人口オーナスとは人口ボーナスの対語で、人口に占める働く人の割合が低下する現象をいう。戦後の高度成長期、日本はまさに人口ボーナスの恩恵を受けてきたが、現在は逆に人口オーナスが経済の下押し圧力として働くようになった。
厚生労働省の「将来推計人口」によれば、2060年の日本の人口は8674万人で、2010年よりも32%、4132万人も減少する。このうち、15~64歳の生産年齢人口は4418万人へほぼ半減するのに対し、65歳以上の老年人口は3464万人へ500万人以上も増え、構成比は23%から40%に急上昇する。
こうした状況は、経済成長に対して国内の個人消費や設備投資など需要面のマイナス要因となるだけでなく、労働投入量など供給面でも大きな制約となる。ところが、負のインパクトへの危機感は薄い。衝撃を軽減するためには、どのような対策を講じるべきなのだろうか。
社会保障は積み立て方式に
人口オーナス対策として第一に考えるべきは、国内の需要減少をいかに緩和するかということである。国内では今後、人口減少に伴って多くの産業が衰退する一方、需要が伸びそうな産業もある。たとえば医療・介護、環境などの関連産業である。これらの産業の潜在需要を規制緩和などで顕在化させることが必要だ。
また、国内市場が縮小しても輸出を伸ばせば成長は可能であり、そのためには国際競争力を持つ産業を育てなければならない。加藤久和・明治大学教授は、「有望なのは省エネや再生エネルギーに関する技術だ。風車や太陽光パネルは競争力を失いつつあるが、石炭液化や地熱、潮力・波力発電の技術は新興国向けなどに伸びる余地が大きい」と見る。