人口オーナス社会が到来、需給両面の活性化に加え、社会保障の抜本改革急げ
第二に、成長のための供給面の対策も必要だ。少子高齢化や人口減少が続けば、経済成長を供給面から決める三要素である資本、労働力、生産性には下押し圧力がかかる。
しかし、対策がないわけではない。資本(貯蓄)の減少に対しては、外国から資本を呼び込めばよい。労働力の減少を補うには、女性や高齢者に加えて、優秀な外国人も活用していくべきだ。とりわけ、世界的に低水準である女性の労働参加率を高めることは重要である。小峰隆夫・法政大学大学院教授は、「今後は人口オーナス要因が国民1人当たりGDPを毎年0・5%程度押し下げるとみられるが、労働参加率を高めたり、生産性を引き上げたりすれば、カバーできる」と指摘する。
人口オーナス対策の第三は、社会保障制度の抜本的な見直しである。
年金や医療など、現行の社会保障制度の多くは賦課方式を基本にしている。賦課方式では、現役世代の払った保険料が、同時期の引退世代への給付として使われる。これは人口増加、右肩上がりの経済を前提にした仕組みだ。生産年齢人口が減り老年人口が増える人口オーナス時代が続くと、いずれ立ち行かなくなる。
その中で賦課方式を維持しようとすれば、消費税増税による財源の拡充、年金支給額の大幅削減や支給開始年齢の引き上げ、医療費の窓口負担の増額など、高齢者の負担増につながる改革は避けられない。
最終的には年金や医療制度を積み立て方式に変えるべきだ、とする意見も多い。公的年金制度について前出の加藤教授は、「現状の賦課方式では受益と負担の世代間格差が大きすぎる。1階部分の基礎年金は全額税方式とし、2階の報酬比例部分は、政府に代わって民間保険会社などが管理・運営する任意加入の積み立て方式に移行したらどうか」と提案する。