ここで山登りを例に考えてみましょう。
急な斜面を登り、汗をかき、息を切らしている状態は、物理的には決して“楽”ではありません。平地を歩く方がはるかに楽です。しかし、なぜ多くの人が山に登るのか。それは、頂上を目指すプロセスや、道中で出会う景色、そして自分自身の限界を更新していく感覚に“楽しさ”を見出しているからです。
子育てにおける反抗期や、激しい感情のぶつかり合いも同じです。
それは平坦な道ではなく、険しい登り坂かもしれません。しかし、「今、この子の自我が爆発的に育っている」「この子の人生という壮大な物語の、重要な一幕が動いている」とメタ視点(高い位置からの客観的な視点)で捉えることができたとき、その時間は単なる「苦痛」から、味わうべき「プロセス(楽しみ)」へ変質します。
つまり、「楽しむ」とは、外側から与えられる「結果」ではなく、私たちの内側から湧き上がる「解釈の姿勢」なのです。
脳のOSを切り替える「意味づけ」の力
心理学的にも、個人の幸福度を左右するのは「出来事そのもの」ではなく、その出来事に対して脳がどのような「意味づけ」を行うかであると言われています。
例えば、子どもが理不尽な反抗をしたとき。
脳のOSが「楽」を求める設定になっていると、「なぜ私の邪魔をするのか」「どうして普通にできないのか」という拒絶反応が出ます。しかし、OSを「楽しむ」設定に切り替えると、「おっ、ようやく親に自分の意見をぶつけられるまで知性が発達したか」という、観察者としての興味が湧いてきます。
この視点の転換を支えるのが、脳にある「RAS(網様体賦活系)」という仕組みです。
RASは、自分が必要だと思っている情報だけをピックアップする「フィルター」の役割を果たします。「今日は大変な一日になる」と予言すれば、脳は「大変な証拠」ばかりを集めます。逆に「今日はどんな成長が見られるだろう」と意識を向ければ、些細な成長の兆しをRASが逃さずキャッチしてくれます。


















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