さらに驚くべきことがある。
「20年以上、結婚式場で馬糞を落としたことが1回もない。合図してからスタートするんですよ」
馬に合図を送り、出発前に用を足させる。これも日々の信頼関係があってこそだ。
馴致の技術は一朝一夕では身に付かない。さらに難しいのは「維持」だという。
「仕事ができる馬に育てても、日々馴致なんですよ。出来上がりってないから。能力を維持させておくことがすごく難しい」
仮にシュガーベルを売ったとしても、買った側が同じレベルで仕事をさせることはできない。馬の能力を維持するには、育てた側より高い技術が必要だからだ。
「同じレベルだったら馬は絶対悪くなるし、僕の技術まで至ってないひとだったら、馬のほうが偉くなっちゃう。言うこと聞いてくれない」
馬車事業を続ける難しさ
貞松さんのもとには、馬車事業を学びたいというひとが何人も訪れる。誠心誠意教える。しかし、実際に事業を始め、続けているひとは、ひとりもいないという。
「馬買って、馬車買って、トラック買って、建物建てて、でもスタートできない。馬のことができても相手あっての仕事だから。結婚式場での立ち居振る舞いとかも大切だし」
初期投資も大きい。移動には馬に馬車、それらを乗せる馬運車、スタッフも必要だ。ちなみに馬車はポーランド製で1台400万円。シュガーベルの餌代だけで年間150万円かかる。貞松さんの場合、融資額は4000万円ほど。費用がかかる割に、続くかどうかわからない。


















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