「かわいそう」と言われても…肉になる運命だった白馬が20年無事故で繁華街を歩く訳—プロが明かす"馬を仕事にする"現実と覚悟

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さらに驚くべきことがある。

「20年以上、結婚式場で馬糞を落としたことが1回もない。合図してからスタートするんですよ」

馬に合図を送り、出発前に用を足させる。これも日々の信頼関係があってこそだ。

馴致の技術は一朝一夕では身に付かない。さらに難しいのは「維持」だという。

「仕事ができる馬に育てても、日々馴致なんですよ。出来上がりってないから。能力を維持させておくことがすごく難しい」

仮にシュガーベルを売ったとしても、買った側が同じレベルで仕事をさせることはできない。馬の能力を維持するには、育てた側より高い技術が必要だからだ。

「同じレベルだったら馬は絶対悪くなるし、僕の技術まで至ってないひとだったら、馬のほうが偉くなっちゃう。言うこと聞いてくれない」


競技中の貞松さん
貞松さんは、馬術競技の選手として全国優勝の経験を持つ(画像:貞松和彦)

馬車事業を続ける難しさ

貞松さんのもとには、馬車事業を学びたいというひとが何人も訪れる。誠心誠意教える。しかし、実際に事業を始め、続けているひとは、ひとりもいないという。

「馬買って、馬車買って、トラック買って、建物建てて、でもスタートできない。馬のことができても相手あっての仕事だから。結婚式場での立ち居振る舞いとかも大切だし」

初期投資も大きい。移動には馬に馬車、それらを乗せる馬運車、スタッフも必要だ。ちなみに馬車はポーランド製で1台400万円。シュガーベルの餌代だけで年間150万円かかる。貞松さんの場合、融資額は4000万円ほど。費用がかかる割に、続くかどうかわからない。

馬運車
馬と馬車を運ぶ馬運車(画像:貞松和彦)
馬運車後部
車の後部には「馬輸送中」の文字が印刷されている(画像:貞松和彦)
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