何より、馬車事業はひとの生死に関わる。安全性を確保するには、調教の技術を維持し続けなければならない。それができなければ、事業は成り立たない。
さらに、馬の調教技術だけでは足りない。結婚式という「晴れの舞台」にふさわしい立ち居振る舞い、式場スタッフとの連携——子どもの頃から映画やドラマの撮影現場で培った経験が、ここで生きているのではないか。結果として、貞松さんにしかできない事業になっている。
「かわいそう…」と言われることもあるが
貞松さんの馬は、どこから来るのか。
「お肉屋さんに行って、白いのを見つけて買ってきて、自分で調教して」
お肉屋さんとは、食肉市場のこと。そのなかから、白い馬を探し出す。ただし、こだわりがある。競馬を引退した馬や、重いソリを引いていた馬は買わない。
「一癖、二癖あるしね。それに、僕は馬車なので、ソリを引く馬とは調教が全然違うんです」
手つかずの馬を選ぶ。肉にするためだけに育てられた、まっさらな馬だ。
「連れて帰って、本当に調教ができるかどうか。今でも賭けですよ」
貞松さんはこれまで10頭以上を食肉市場から連れ帰り、全頭を仕事ができる馬に育て上げた。
「なんでかって言ったら、諦めないんで。絶対に良くする。良くなるまで調教するんで」
相棒のシュガーベルも、同じ経緯で福岡にやって来た。毎週マリノアに通い、一緒に仕事をして11年目を迎える。
この活動を、世間は「レスキュー」と呼ぶ。しかし、貞松さん自身の感覚は少し違う。
「僕も助けられてるんですよ、逆に。お互いさまなんです」


















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