一風堂のラーメン「飽きられない」本当の理由 世界で勝負する名店は変化を恐れない
島津さんは「ラーメンの味を変えない方がリスク」と語る。競争の激しいラーメン業界では、日々おびただしい種類のラーメンが生まれては消えている。そんな多種多様な個性がぶつかり合うラーメン業界にあって、一風堂がいちばん恐れていることは「お客に飽きられてしまうこと」なのだ。
創業当時から同じ味を出し続けても、ずっと受け入れられ、飽きられないという保証はどこにもない。もちろん「前の味の方が好きだった」といって、お店に来なくなる人もいるというが、離れていってしまうお客よりも味を変えて進化させることで、新たなファンになるお客の方が多い。だからこそ、「一風堂」は味を守り続けるのではなく、進化させ続けるのだという。
ちょうど、今年2015年は創業から30年目の年。先月の10月に、ラーメンの味を大きく変えたばかりだ。「一風堂」では、毎年少しずつラーメンにマイナーチェンジを加えており、さらに10年単位で大きく味を変えている。
30年目の進化とは…?
一風堂のラーメンは、あっさりした「白丸」と、コクと深みのある「赤丸」の2種類がメイン商品。30年目、大きく変わったうちの1つが「麺」だ。
これまでは、2種類とも同じ麵を使っていたが、それぞれのラーメンの特徴をより楽しむために、細さと切り方に工夫を凝らし変化をつけたというのだ。
目で見ただけではわからないが、この2つの麺は細さだけなく、麺の形も違う。あっさり味の白丸では断面を丸くし、やさしくて懐かしい食べ心地を追求している。一方、コクと深みのある赤丸用の細麺は断面を四角くして豊かな歯ごたえを実現すると同時に、スープに絡みやすくしている。
また、一般的なラーメン店の麺がおよそ30cmなのに対して、一風堂の麺は27cmと少し短い。こうすることで、ひとすすりで食べられるように長さまで工夫しているのだ。
さらに、チャーシューも、以前は同じバラ肉が2枚だったが、リニューアルによりバラ肉と肩ロースの2種類の味を楽しめるようにした。また、スープの味を決める「かえし」と呼ばれるラーメンの元ダレも製法自体から変えたことで、これまでとはまったく別物のスープにしたのだという。
こうした味の進化をつねに推し進める一風堂だが、島津さんは「おいしさだけでは生き残れない」と続ける。国内外に拡大する一風堂を支えるのは、ほかならぬ「人」であるため、一風堂は人の能力開発を急ピッチで進めているのだという。