《名もなき仕事》引き受ける勤続20年のベテラン女性社員が退職…"完璧な引継ぎ"でひと安心のはずが現場が大混乱に陥った必然の理由

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女性のベテラン社員
彼女は拍手に送られて現場を去っていきました。しかし、そこから現場は大混乱に陥ります。(写真:saki/PIXTA)
「引き継ぎは完璧だったはずなのに、なぜ現場が回らないのか」
長年、会社を支えてきたベテラン社員が退職した途端、それまで表面化していなかった混乱が一気に噴き出し、業績まで傾いてしまう。近年、こうした「ベテランの離職ショック」に直面する企業が後を絶ちません。恐ろしいのは、これが「業績が悪く、人間関係も冷え切った会社」ではなく、むしろ「業績は安定し、現場も信頼し合っていたはずの“良い会社”」で起きているという点です。
本稿では、ある組織で起きた「勤続20年のスタッフの退職」という実例をもとに、ベテランの知恵を「会社の資産」へ書き換えるための本質的なシニア戦略を『社長が3ヶ月不在でも成長する会社の作り方』の著者である安東邦彦氏が考察します。

「少し、お時間いいでしょうか」と呼び止められて

ある保険代理店での出来事です。経営は安定し、業績も右肩上がり。日々の問い合わせ対応や契約更新の手続きも滞りなく進み、社内のだれもが「社内に特に大きな問題はない」という認識でした。小規模ながら、現場は落ち着いて回っていたのです。

その中心にいたのが、勤続20年を超える女性スタッフ。お客様からの問い合わせや事故対応など、電話による顧客対応の第一線で、保険商品だけでなく、顧客一人ひとりの事情や過去の経緯を把握していました。新人や中堅社員が対応に迷ったとき、自然と相談が集まる存在でもあり、派手に前に出るタイプではありませんが、「いてくれると現場が回る」と感じさせる人でした。

そんなある日の朝、廊下で立ち止まった彼女が、静かに管理職を呼び止めました。

「今少し、お時間いいでしょうか」

会議室に入ると、彼女は少し間を置いて、こう切り出しました。

「今後の働き方について、相談したいんです」

最初は、業務調整の話だと思っていました。実際、これまでも業務量について軽く話したことはあります。今回も、そのような話だろうと管理職は受け止めていました。

ところが、話が進むにつれて、空気が変わっていきます。「このまま、今と同じ仕事を続けていくのは、正直、難しいと感じています」

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