《名もなき仕事》引き受ける勤続20年のベテラン女性社員が退職…"完璧な引継ぎ"でひと安心のはずが現場が大混乱に陥った必然の理由

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一方で、ベテランの経験を活かしながら組織も成長し続けている会社には、共通する問いがあります。

「ベテランの経験を、どうすれば組織の『資産』に変換できるのか?」

現場の最前線で手を動かし続けることだけが、ベテランの価値ではありません。長年の経験によって培われた「判断の基準」や「思考の型」を、いかにして組織に残すか。ここに、二択ではない「第三の選択肢」があります。

この第三の選択肢を考える際、多くの経営者が陥る最大の罠があります。それは、シニア活用を「福祉」や「優しさによる延命」と捉えてしまうことです。

実際、多くの企業で行われている再雇用制度は、現役時代の役割をほぼ変えず、給与だけを下げる「現役の延長」に留まっています。これは、問題を先送りしているだけであり、現場崩壊のタイマーを止める解決策にはなりません。

私たちが目指すべきは、ベテランを現場の「作業」から解放し、彼らの中にしかない知恵を組織の資産へと変換する、能動的で戦略的なキャリアシフトです。

このシフトを成功させるためには、発想の転換だけでなく、明確な設計思想が必要になります。

第三の選択肢を生む、二つの設計思想

第一に必要なのは、リスク管理としての健康マネジメントです。

「若い頃と同じ働き方」をベテランに無意識に期待し続けることは、経営側が現場崩壊というリスクを早めているのと同じです。健康管理の支援や業務負荷の調整、柔軟な勤務設計は、単なる福利厚生ではありません。

それは、ベテランが持つ知恵を組織に定着させるまでの「時間を確保する」ための、極めて高度なリスクマネジメントなのです。

第二に必要なのは、ベテランのキャリア選択肢を増やすことです。

体力や精神的な限界が訪れる前に、評価の軸を「個人のパフォーマンス」から「組織の再現性への貢献」へと移行させる。ここで初めて、ベテランの経験は属人的なノウハウから、組織の資産へと昇華していきます。

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