「父と母、最後の10分間」 延命治療を拒否した母がいよいよ…"ずっと頑固だった父"に言わせた「愛してる」の奇跡

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それまですべての情報がおじいちゃん経由でしか入ってこなかったこともあって、直接話を聞きたかったこともあります。病院に移すかどうか、決める必要もありましたし。

診療所でお会いした萬田先生は、お若いのですが、実に“変な”人でした。(“変な”というのは最後に会ったうちの三男の感想ですが、まあ、当たっているかと)

“肉体的な苦しみ”は1、“心の苦しみ”が9

萬田先生はいろいろ病状について説明したあとで、こう言いました。

――いわゆる“がんの苦しみ”が10だとしたら、“肉体的な苦しみ”は1、これからどうなる? 死ぬのは怖いといった“心の苦しみ”が9。

――肉体的な痛みは薬で完全に消すことができる、でも心の苦しみは別。

――おばあちゃんは信仰のおかげで“心の苦しみ”がすごく少なくて済んでいる。だから今まで本当は苦しかったのかもしれないけど、苦しそうな顔もせずにジャムを作ってこられた。心の苦しみが1で、合わせて2くらいで済んでいたのでは?

――信仰と家族の支援のおかげで、がんの進行の限界まで平和に生きてこられたのだと思う。今は限界を超えたところで病状が進行している、まだまだ大丈夫の状態ではない。

――そんな状況の患者さんに対して、あなたたちができることが一つだけあります。それは「愛してるよ」「私を生んでくれてありがとう」と手を取って正面から言うことです。これができれば、どんな薬よりも効果があります。おばあちゃんは、今日は大丈夫だけど、明日どうなるかは誰にもわかりません。そんな状態です。お互いに話ができるうちにお願いします。

私は「おじいちゃんはどうしましょう」と質問しました。先生は口で答えず、にっこり笑って、説明に使っていたレポート用紙に万年筆でこう書きました。

「ご本人に言わせてください。自分たちが先に言えてから。『愛してるよ』って言わせよう!」

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