上記の計算のうち、ヤードスティック方式による基準コストの算出は、JR、大手私鉄、地下鉄の3グループごとに分けられ、それぞれで区別して算出される。
まず、対象となる各社それぞれの項目(線路費等)に関する「基礎データ」の数値を基準単価の算定式に当てはめて「基準単価」をはじき出す。
次に基準単価に「施設量」の数値を乗じ(たとえば「線路費」には「線路延長」のキロ数が、「電路費」には「電線延長」のキロ数が、「車両費」には「車両数」がそれぞれ施設量になり、これを乗じる)、それらを合計して「基準コスト」を算出することになる。
こうして算出された2014(平成26)年度におけるJR旅客会社の「基準コスト」を見ると、JR北海道は631億200万円であり、JR四国は189億3800万円である(2015(平成27)年7月30日に国交省が公表)。
各鉄道事業者の「基準コスト」が算出されたあと、実際にかかった「実績コスト」と「基準コスト」とを比較する。先の具体例でいえば、JR北海道の2014(平成26)年における「実績コスト」は633億7700万円、JR四国は184億7000万円となっている。JR北海道は「実績コスト」が「基準コスト」を上回り、JR四国は「実績コスト」が「基準コスト」を下回っている。
北海道と四国、効率がいいのは?
JR北海道のように「実績コスト」が「基準コスト」を上回っている会社(経営効率がよくない会社とされる)は「基準コスト」が「原価」とされる。一方、JR四国のように、「実績コスト」が「基準コスト」を下回っている会社(経営効率がよい会社とされる)は「基準コスト」と「実績コスト」を合計した額の2分の1(187億400万円)が「原価」となる。
「実績コスト」が「基準コスト」を下回っている会社には「実績コスト」をそのまま「原価」とするのではなく、「基準コスト」に比較して実際のコストを抑えたという経営効率化の努力を認め、その分を考慮して原価に加算することによって経営効率化へのインセンティブを与えるのである。
これにより、体力の異なる鉄道会社ごとに適正な原価を設定することになり、鉄道会社の健全な経営を確保するとともに、各鉄道会社に効率化への努力を促す。それは、利用者の負担を適正なものに抑制することにつながる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら