少年時代の夢を叶えてメジャーリーグへ。ボストン・レッドソックス吉田正尚が中学時代から貫く「流儀」

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「一流選手はみんな準備を怠りません。でも、吉田くんの場合、それはさらに徹底しています。アスリートの身体に触れていると、言葉ではない何かが伝わってくるんです。

それは、激しくエネルギーを放出した後の余韻、余熱のようなものだったり、身体全体のズレやゆがみであったり、疲労が溜まった骨や筋肉の悲鳴であったり、さまざまです。私たちは、そうした声にならない声を聞くのが仕事です。それは、ときには本人ですら気づいていない声なんです。

でも、吉田くんの場合は、自分で身体からの声を理解しているんです。それはきちんと自分の身体と向き合っているから、日頃からきちんと準備を怠っていないから。そんなアスリートは、めったにいないです」

吉田正尚の流儀

本人ですら気づいていない「身体からのメッセージ」を、吉田はきちんと理解しているという。具体的には、どういうことなのか?

「吉田くんは、本当に自分の身体のことをよく理解しています。私が触っていて、〝ここが疲れているな”とか、〝ここの張りはすごいぞ”と思っている箇所と、本人が感じている違和感はいつも同じです。自分の身体でも、意外とわかっていない選手が多い中で、吉田くんの場合はそんなことはありません。それはどうしてなのか?」

こちらに向き直って、内窪氏は言う。

「……きちんと自分の身体と向き合っているからです。きちんと自分の身体と語り合う時間を作っているからです。それに、感覚が鋭いんでしょう。繊細なんです。

だから、自分と向き合っているときに、身体と会話ができる。きちんと理解をして練習をして、トレーニングをしているのだと思います」

鯖江ボーイズの佐々木昭弘監督の言葉がよみがえる。

「中学時代の彼は指導を求めていませんでした。彼が求めていたのは確認なんです」

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中学生の頃から、吉田は自らの中に「答え」を持っていた。その回答にたどり着くための正しいルートを歩んでいるのかどうか? 彼が第三者に求めていたのは「確認」だった。そのスタンスはプロの世界に入っても、アメリカに渡っても変わらなかった。

吉田が内窪氏に求めていたのは「治療」であると同時に「確認」だった。

「彼は本当に身体に対して敏感です。自分の身体の状態がこうなっているから、今はこんなトレーニングをした方がいい。それを自分で理解しています。

だから、私に対しても、〝今はどうなっていますか?”と身体の状態を確認することを怠りません。そして、その答えを持ってトレーニングコーチに対しても、自分の考えをしっかりと述べています」

指導者に言われたからやるのではない。自分でやるべきことを理解し、「本当に今、自分にとって必要なことは何なのか?」を確認した上で、自分の考えを貫く。決断する。最適な道を選択する。

それが、中学時代から変わらぬ吉田正尚の流儀なのである。

【↓あわせて読む↓】
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長谷川 晶一 ノンフィクションライター

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はせがわ しょういち / Shoichi Hasegawa

1970年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、出版社勤務を経て2003年にノンフィクションライターとして独立。以後、主にスポーツ(特にプロ野球)やサブカルチャーをテーマに数多くの著作を刊行。2005年から12球団全てのファンクラブに入り続ける「12球団ファンクラブ評論家(R)」としても知られる。

近著に『正しすぎた人 広岡達朗がスワローズで見た夢』(文藝春秋)『神宮球場100年物語』朝日新聞出版)『道を拓く 元プロ野球選手の転職』(扶桑社)『海を渡る サムライたちの球跡』(扶桑社)『プロ野球アウトロー列伝 異端の男たち』(大洋図書)『決断ーカンボジア72時間ー』(主婦の友社)など。

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