―――つまり、散歩を通じて地域経済への関心が生まれた、というわけですね。もちろん数学的な素養や共通テストの結果も加味されますから、優秀でなければ合格できないでしょうが、彼の魅力はそうした優秀さではなく面接で『散歩』と答える素朴な感性にあるような気がしますね。
孫:ちなみに彼は、新幹線で隣り合った人には必ず話しかけるくらいお喋り好きだそうで、それも面接で話したそうです。彼の「散歩」という回答は一見すると珍妙ながらも、こうした背景まで理解すると、まさに彼を象徴するワードとして、面接官に受け入れられたのではないかと思います。
もう1つの事例:ギネス記録挑戦から教育学へ
―――他にも、最初から学問的な関心でなくても合格している例はありますか?
孫:はい。教育学部に推薦合格したSさんも象徴的です。彼女は高校の生徒会長として、文化祭で「ご当地グルメの食べさせあい最多ペア数」というギネス世界記録に挑戦しました。
―――一見すると、教育学と何の関係もない事例ですね。ギネスといえばすごいように見えますが、実績として評価される類のものではないですね。
孫:そうですね。でも彼女は、その過程で多くの人を巻き込み、地域を動かし、失敗や調整の難しさを経験した。そこから、「人が挑戦するときの自己肯定感とは何か」「学校現場における先生や親以外の大人と交流する経験の必要性」に行きつき、それが教育学部への志望動機になったのだと言います。
―――この2人の事例を聞いていると、輝かしい実績だけではなく「他者と対話する力」が評価されているのかもしれませんね。
孫:それだけではないと思いますが、それは絶対見られているでしょうね。東大に限らず、総合型選抜入試や学校推薦型選抜入試では親以外の他人と物怖じせずに話せる能力はかなり評価される傾向にあると思います。
今回の2人で言えば、Eさんは、商店街の店主たちと日常的に会話していた。新幹線で隣に座った人にも話しかける。Sさんは、ギネス記録挑戦のために、地域の大人たちを巻き込んで動かした。この「見知らぬ他者とコミュニケーションを取る力」こそが、実は東大推薦で評価されているのではないか、と感じます。
―――確かにそれは、一般入試では測れない力ですね。


















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