―――東京大学の推薦入試と聞くと、「国際科学オリンピックでメダルを獲った天才」や「高校生起業家として成功したスーパーマン」といったイメージを持つ人が多いですよね。実際のところ、本当にそんな人ばかりなんでしょうか?
孫:確かに華々しい実績を持つ学生もいますが、それはあくまで一部です。取材してみて感じたのは、実績がすごいから合格しているわけではない、ということです。
東大が推薦入試を導入した最大の理由は、「多様な学生を確保したい」という問題意識にあります。ペーパーテストだけでは測れない、「点数以外の力」を持った学生を見つけたい、と。
実際、2025年度の東大推薦合格者は女性比率が約49.4%と過去最高を記録しました。地方の公立高校からの合格者も着実に増えています。
合格者「高校時代に力を入れたことは散歩です」
―――なるほど。実際、どんな人が合格しているんですか?
孫:今回取材して1番象徴的だったのが、経済学部に合格したEさんのケースです。彼は面接で「高校時代に力を入れたことは何ですか?」と聞かれて、「散歩です」と答えたそうです。
―――「散歩」ですか。
孫:はい。しかも、彼は数学オリンピック出場経験もなく、英検も2級止まりでした。実績だけで言えば、総合型選抜入試なら早慶も難しいと思います。それでも彼は、東大経済学部の推薦入試に合格しました。
―――何故彼は合格できたのか、孫さんはどう分析していますか?
孫:Eさんは、地元・奈良の商店街を散歩するのが好きだったんです。天ぷら屋さんや饅頭屋さんに立ち寄って、店主と話をする。そういう日常を繰り返していたとのこと。
彼にとってそれはただの散歩ではなく、地元を理解するための対話だった。彼はその中で「この町の人たちを応援したい」という想いを強く持つようになったのだそうです。
インタビューの中で、こう答えています。
「私は、こうした地元の風景や人々を、もっと応援したいんです。……1番小さな単位、つまり『人の生活』の目線から、助けられるようなアプローチがしたい」
そして彼の関心は、「どうすれば地方経済を活性化できるのか」という経済学的な問いに発展していきました。そこから自身の研究を進め、これが東大の推薦入試で評価され、経済学部に合格したそうです。


















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