母にとって、この旅行最大の問題は「行列に慣れていない」ことだった。さらに、田舎では過剰な要求であっても大きな声で言えば通ってしまうことも多かったのだろう。こうした背景から、私の母はUSJの行列に耐えられなかったようだ。
長すぎる待ち時間にイライラばかりが募るのに、タバコを吸いに行きたくても列から離れるわけにはいかない。母がどんどん不機嫌になるのが手に取るようにわかった。
「ママ怒っとるね」
「いつものことじゃろ」
「どうするん?」
「知らん、お前が機嫌取れや」
兄と頭を突き合わせてそんな会議を開いた。母親を下手に刺激して「帰る」と言われては困るのだ。だが、何もしなくてもこの人は不機嫌を募らせていつか爆発してしまうだろう。そんな恐怖を感じながら、トボトボと母親の後ろを着いて歩いた。
「ああ、もう我慢できん!!」
結局、母は行列に耐え切れず、(当時はあった)列に並ぶのが難しい人向けの「優先レーン」に突入した。当然、そのレーンからアトラクションに乗せてもらえるわけもなく、ただ無駄に歩くだけになってしまった。
要求が通らなかった母親の機嫌は、私たち兄妹の予想通り絶不調に。「ママはタバコ吸ってくるけえ、好きに遊べば?」と言い放ち、ひとりでどこかの喫煙所へと消えていった。
幸い、母親の交際相手がついていてくれたので良かったが、低学年の兄妹だけだったらどうなっていたのだろうか。あんなに広いUSJで迷いに迷い、大人に助けも求められず、ただただ死んだ顔で歩き続けることになっていたのかもしれない。
それを別に悪いとは思わない人間なのだ。こうした体験を何度も「恥ずかしい」と思ってきたが、恥ずかしい行為だと自覚したのはUSJの優先レーンからかもしれない。それでも恥ずかしがることなく、「自分はこういう人間じゃけえ」という母を見て育った筆者が、タバコを嫌いになったのはある意味必然ともいえる。
大阪への旅行は、最悪な終わり方を迎えた
USJでの地獄のような時間が終わり、帰りの道中、またしても事件は起きた。帰りの新幹線で、兄妹そろって乗車券と特急券を1枚ずつ無くしてしまった。



















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