「ゴミ山の寝床で、インスリン注射を打ち…」 壮絶なゴミ屋敷で闘病する60代男性が《"孤独な部屋"から脱出できた》ワケ

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「袋に入れていたおかげで、床のダメージが少なくて済みました。そのまま放置していたら、もっと深刻なことになっていたはずです」

ゴミ屋敷清掃業者「イーブイ」代表の二見氏はそう説明する。ここは分譲マンションであり、男性は今後、リフォームを行って部屋を再生させる予定だという。二見氏は、今回の現場をこう振り返った。

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畳はやや劣化していたものの、フローリングの床はそこまで痛んでいなかった(写真:イーブイ)

「片付けられないのは人間の欠陥ではない」

「モノではなく生ゴミが溜まるというのは、やはりどこか心に病を抱えていたのではないかと思います。でも、その背景は本人にしかわかりません。だから、一概に『だらしない』とか『病気だ』とか、一括りで片付けられることではないんです。

片付けられない人の中には『自分は人間的に欠落している』と自責する方が多いですが、そんなことを思う必要はありません。運転や料理が苦手なのと同じ、苦手なことの1つにすぎないんです。

僕らは決して依頼者さんを責めることはしません。僕らは過去を問うのではなく、次のステップを提案したいんです。僕たちが伺うからといって、あらかじめ片付けておく必要もありません。どんな部屋を見ても、僕らは驚きませんから」

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天井までゴミで埋もれていた2つの和室はすっかりきれいになった(写真:イーブイ)

二見氏は「共感」の重要性を強調する。「自分1人ではない」と思えることで、踏み出す1歩につながるからだ。

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「頭の片隅に『助けてくれる場所がある』と置いておいてほしい。ペットやお子さんがいる家庭なら、早めにご相談いただければすぐにでも力になれます」

今回の片付けは2回に分けて行われた。最初に片付けた約1カ月前、男性はこんな言葉を漏らしていた。

「家族で暮らした昔のことが頭をよぎることもありますが、ここがきれいになれば吹っ切れるような気がします。この家さえなんとかなれば」

男性はもう「孤独な部屋の住人」ではない。

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大量のペットボトルで床が見えなかったリビングとキッチンもまっさらな状態に。ここから新しいスタートを切る(写真:イーブイ)
國友 公司 ルポライター

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くにとも こうじ / Kozi Kunitomo

1992年生まれ。筑波大学芸術専門学群在学中よりライターとして活動。訳アリな人々との現地での交流を綴った著書『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)が文庫版も合わせて6万部を超えるロングセラーに。そのほかの著書に『ルポ路上生活』(KADOKAWA)、『ルポ歌舞伎町』(彩図社)がある。

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