「袋に入れていたおかげで、床のダメージが少なくて済みました。そのまま放置していたら、もっと深刻なことになっていたはずです」
ゴミ屋敷清掃業者「イーブイ」代表の二見氏はそう説明する。ここは分譲マンションであり、男性は今後、リフォームを行って部屋を再生させる予定だという。二見氏は、今回の現場をこう振り返った。
「片付けられないのは人間の欠陥ではない」
「モノではなく生ゴミが溜まるというのは、やはりどこか心に病を抱えていたのではないかと思います。でも、その背景は本人にしかわかりません。だから、一概に『だらしない』とか『病気だ』とか、一括りで片付けられることではないんです。
片付けられない人の中には『自分は人間的に欠落している』と自責する方が多いですが、そんなことを思う必要はありません。運転や料理が苦手なのと同じ、苦手なことの1つにすぎないんです。
僕らは決して依頼者さんを責めることはしません。僕らは過去を問うのではなく、次のステップを提案したいんです。僕たちが伺うからといって、あらかじめ片付けておく必要もありません。どんな部屋を見ても、僕らは驚きませんから」
二見氏は「共感」の重要性を強調する。「自分1人ではない」と思えることで、踏み出す1歩につながるからだ。
「頭の片隅に『助けてくれる場所がある』と置いておいてほしい。ペットやお子さんがいる家庭なら、早めにご相談いただければすぐにでも力になれます」
今回の片付けは2回に分けて行われた。最初に片付けた約1カ月前、男性はこんな言葉を漏らしていた。
「家族で暮らした昔のことが頭をよぎることもありますが、ここがきれいになれば吹っ切れるような気がします。この家さえなんとかなれば」
男性はもう「孤独な部屋の住人」ではない。
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