「ゴミ山の寝床で、インスリン注射を打ち…」 壮絶なゴミ屋敷で闘病する60代男性が《"孤独な部屋"から脱出できた》ワケ

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「30年前にこのマンションを買い、10年間は家族4人で暮らしていました。そのときの記憶ですか……。楽しかったというより、後半は本当にしんどかったですね。完全に家庭内別居だったので。離婚前の3〜4年はもう元妻と顔を合わせるのもキツくて、家に帰りたくなくて。仕事で残業する日は、家に帰らなくて済むのが嬉しくて仕方がなかったです」

結婚生活は15年ほど続いたが、最後の数年間、男性は家に帰ると玄関横の洋室に直行し、リビングより先に入ることもほとんどなかったという。

ゴミ屋敷
廊下からリビングに入る扉。その前にもゴミがあり、開けることも困難だった(写真:イーブイ)
ゴミ屋敷
長いこと開けられていなかった浴室内もカビまみれだ(写真:イーブイ)

「それでも子どもたちと過ごすことだけは楽しかったです。小さい頃は『おとん、おとん』と寄ってきましたからね。でも、今のこの状況を子どもたちには知られたくないですし、今さら助けてほしいとも思いません。私は打たれ弱いもので、また何か言われるのが怖いんです。

子どもたちも元妻からいろいろ言われているのか、私のことが嫌いになっているみたいなんですよ。寂しいですが、仕方ないですね」

「新しい妻」に背中を押された

「家のことを1つもしない」と責められ、家から逃げるように働き続けた結果、家族は出ていき、その後の部屋は荒れ果てた。しかし、停滞していた状況を動かしたのは、今年(2025年)に入ってからの「再婚」だった。新しい妻がこの状況を見かねて、男性の背中を強く押したのだ。

「今は再婚した妻の家で一緒に暮らしているので、この部屋にはほとんど帰っていません。妻をこの部屋に入れたことは一度もないですが、『ちゃんとやりなさい!』と半ば強制的に言われて、イーブイさんに電話をすることになりました。

電話をするときは、こんな惨状で迷惑をかけてしまうんじゃないかと勇気がいりましたが、妻に背中を押されました。新しい家では、妻がいるのでこうなる心配はないと思います」

作業開始から4時間。すべての部屋からゴミが搬出された。20年にわたってゴミ屋敷の状態が続いていたにもかかわらず、床のダメージは予想よりも軽いものだった。生ゴミを直接捨てず、袋にまとめていたことが功を奏した。

ゴミ屋敷
ゴミを手早く分別し、片付けていくイーブイのスタッフ(写真:イーブイ)
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