エアコンも数年前に故障しているが、唯一作動していたテレビと扇風機のコンセントは、大量のゴミの中に埋没していた。その状態で通電を続けるタコ足配線は、火災のリスクを大いに孕んでいた。
ゴミ山の表面が、大量のエタノール消毒液の袋で覆われている。見ると、注射器が入っていた袋などがそのまま残っている。男性は自嘲気味に理由を明かした。
「これはインスリン注射をした後に使っていた消毒ですね。注射器は病院で廃棄してもらっていますが、消毒のほうは残っていました。こうやって部屋の中に行けるって久しぶりです。ここまですごいところはまあないでしょうね。我ながら感心しますわ……」
エアコンも故障していれば、窓も開かないので換気もできない。とくに夏はこんな環境で眠ることなんて、とてもじゃないができなさそうだ。
「不思議と、私はどこでも寝られるので大丈夫なんですよ。たしかに夏は相当暑いです。それでも、扇風機を回していればなんとか凌げるんですよ」
ゴミが溜まり始めた起点は、この寝室だった。布団の上で食事をし、「明日片付ければいい」と袋に入れ、そのまま放置する。その積み重ねが、この光景をつくり出した。
コロナ禍に入ると、さらにゴミが増え始めた。もともと食事のほとんどを外食で済ませていたが、緊急事態宣言により家で食事をせざるをえなくなった。そうして、隣の和室、リビングと寝室からなだれ込むようにして家全体がゴミ屋敷と化していった。
「壮絶なゴミ屋敷」を生んだ男性の環境要因
男性がこの状況に陥った背景には、自身が抱えている病気と過酷な労働環境があった。
「ゴミ屋敷になってしまった原因は、離婚のショックもあると思います。それがきっかけかわからないですが、1型糖尿病になったんですよ。以来、インスリン注射を打ちながら仕事を続けてきました」


















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