46歳で元夫と別れてから、女手ひとつで子どもたちを育ててきたカルメンさん。再婚しようと思ったことはなかったのだろうか。
「ないです。離婚以降は『自分が好きな人ではなく、好かれる人に応えよう』としてたので、72歳まで何人かお付き合いした人はいましたが、自分には結婚生活は向いていないと自覚しているので、一緒には暮らしませんでした。
仕事をして家のことをして、さらに相手の世話なんて……私には無理。今は自分の年金で暮らせるから、誰かに頼る必要もないんです」
年齢を重ねるほど、生活のなかで必要になるケア労働は増えていく。ケアに関することを全て担ってきた世代の女性にとって、新たな同居は“リスク”にも映るのかもしれない。カルメンさんは、恋愛よりも今は自分の楽しみのほうが大事だという。
「来年から、懐かしいポップスを歌って踊る講座に通おうと思って。発表会に出たいわけじゃないけれど、みんなで声を出して体を動かしたら、きっと楽しいでしょう?」
取材の間、過去のつらいことを思い出して涙ぐむ場面もあったカルメンさんだが、最後に見せた表情は、楽し気な笑顔だった。
翌日に届いたメールのこと
取材の翌日、カルメンさんから丁寧なメールが届いた。
そのメールには「つらい時には決して泣かなかった私が、昨日涙が出たのは、安心しきった安堵の涙です」と書かれていた。
ずっと張り詰めて生きてきた彼女が、今は安心しているからこそ、涙を流しながらも、過去のつらい体験を話すことができたのだと知った。またそこには、夫が既に亡くなっていること。最期に、娘たちと会わせることができたことが書かれていた。
メールの結びにあったのは、「ひとりでいることが、私のいちばんの安らぎです」との言葉。
人と距離をとりながら、傷を抱えながら、それでも誰かを思い続ける。そんなカルメンさんが、穏やかな新年を迎えられることを、願わずにはいられない。
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