アップルの独り負け?スマホ新法は誰得か。確実に変わるスマートフォンの使い勝手とリスク管理

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4つ目と5つ目の立場として取り上げたいのは規制対象となっている企業だ。具体的にはグーグルとアップルだが、実は同じ規制対象でありながら、両者の立場は大きく異なる。

グーグルは規制される側でもあるが、iPhoneの標準ブラウザが選択制になったことで自社ブラウザChromeのiPhone上での利用者拡大が期待できる利益享受者でもある。

AndroidはそもそもGalaxy Storeなど他社が運営する他社のアプリストアを認めてきた背景もあり、実はアプリ市場開放の影響はほとんど受けない。

グーグル以外の会社を介した決済もゲーム以外のアプリについては22年から実施済みで、新法施行後は新たにゲーム会社に対しても独自の決済を許すという拡張が行われるのみだ。

AndroidユーザーのChrome利用率が減る?

グーグルとして新法施行で不利益を被る可能性があるのは、Android端末上でもユーザーに標準ブラウザの選択を促さなければならないため、自社ブラウザのChromeの利用率が減る可能性があることと、iPhone/Androidの両プラットフォームで検索サービスが選択方式になるため、ユーザーがGoogle以外の検索サービスに流れる可能性があることだ。

しかし、これらの可能性はいったいどれほどあるのか。Statcounter Global Statsが調査した日本のスマホ市場でのWebブラウザのシェアは25年9月時点での調査でChromeが51%でSafariが43.4%で3位のSamsung Internetは1.7%と圧倒的な差がついている。アップルのSafariにAndroid版がないことを考えると、ユーザーが他のブラウザに流出する可能性は極めて低い。

また検索サービスについても、読者諸兄にGoogle検索以外のどんな検索サービスがあって使ったことがあるかを考えてもらえばわかる通り、そう簡単にグーグルの優位性は変わらない。

もしiPhoneのような影響力を持つプラットフォームがグーグル以外の特定の検索サービス(例えば名前はふざけているが、ファンの多い「DuckDuckGo」)を標準の検索サービスに選んだら、グーグルの牙城に対してもそれなりの影響力があるだろう。そうしたことを考慮してグーグルはアップルに対して年間200万ドル(3兆円)を支払っているが、ヨーロッパや日本で標準検索サービスでなくなるとしたら、これまでと同様の支払いは不要になるはずだ。ユーザーをほとんど失うことなく、支払い料金も下げられるのなら、やはり、これもグーグルにとって有利でしかない。

グーグルは「スマホ新法」において規制される側でありながら、実は相対的に見るとかなり多くの利益を享受する企業となっている。

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