アップルの独り負け?スマホ新法は誰得か。確実に変わるスマートフォンの使い勝手とリスク管理

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他社アプリストアは、ユーザーに対して独自にマーケットプレイスとしてのポリシーを示し、独力でインストールされたアプリによって引き起こされる不正を防止し、アプリ購入者に対するカスタマーサポートや返金対応をしなければならない。

法律の施行は避けられないという状況になって、アップルはこの法律の範囲内でどうやったらユーザーがさまざまな被害に遭う危険を回避できるかを考え、例えば他社から配布されるアプリに対しても、成人向けのアプリを子供が使ってしまうようなことがないように年齢制限表示の義務化などいくつかのリクエストは通している(ただし、その表示が正しいかの確認は提供するアプリストア任せになる)。

また悪質なサイトが、クレジットカード情報などを奪うために詐欺の決済サイトなどに誘導する可能性も考慮して、アプリ内課金の支払い時には常にアップルの正式のアプリ内課金も選択肢で選べるようにすることをルール化した。

アップルが有利にならないように他社が提供する決済方法と、アップルの課金では値段設定を変えることができる。アップルに手数料を払いたくない開発者は独自に決済手段を用意するか、アップルより手数料の安い決済サービスを使い、アップル公式決済で買う場合よりも安い価格をつけることができる。支払い価格の安い他社の決済サービスを信頼する人はそちらで払えばいいし、多少割高になってもアップル標準決済で買った方が安心という人はそちらを選べば良い。

法律制定前夜、アップルが一番気にしていたのが相互運用と呼ばれる法律の拡大解釈の問題だ。実はヨーロッパでは、これが大きな問題になっている。ヨーロッパで提供されているDMA
と呼ばれる規制では、アプリ開発者が「不平等」と感じらた「相互運用」の名の下に、アップルに独自技術を他社に開放するように請求できてしまう。

この仕組みを利用してMetaなどの一部企業が、ユーザーの居場所を特定できてしまうWi-Fi情報をアクセスできるようにする要求をしたりしている。MacからiPhoneを遠隔操作する機能も、同様に他社に開放しろという議論につながる可能性がある。これをやってしまうと、悪意のある開発者がパソコンからiPhoneを遠隔操作して銀行の口座番号など、重要なプライバシー情報を覗き見できてしまう危険がある。

そのためアップルはヨーロッパでは、他社に開放してしまうとプライバシー保護に重大な危険が及ぶ可能性がある一部機能の提供を取りやめてしまった。

幸運なことに、日本政府はEUがアップルに強要したような要求が少なくとも現時点では盛り込まれていないため、アップルは日本に対しては最新機能の提供を差し止めるといったことは現時点では行っていない。

今回の新法でプライバシーやセキュリティーのリスクが高まり、質の悪いアプリによってiPhone上での体験の質が低くなると警鐘を鳴らしつつも、ヨーロッパで施行されているDMAよりかは消費者の安全性を重視した法律になったと、一定の評価もしている。

ユーザーは自由も得るが、リスク増にも注意が必要

さて、最も大事なのは6つ目の立場。つまり一般ユーザーの立場だ。これまでのiPhoneの利用で何も問題を感じていなかった人は、引き続きWebブラウザでも検索サービスでも、これまで通りの設定にして、これまで通り使い続ければ問題が増えることはない。

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