アップルの独り負け?スマホ新法は誰得か。確実に変わるスマートフォンの使い勝手とリスク管理

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もちろん、手動審査には凄い手間がかかる。おまけにアップルは世界でアプリを展開したい開発者に代わって、国ごとにルールが違う税務処理なども肩代わりして行い、社員数が数人の零細アプリ開発者でも簡単な操作で世界175カ国でアプリを展開する仕組みを提供している。App Storeの提供が始まったばかりの頃は、世界中に多くのアプリ長者が誕生した。ゲームをカートリッジなどの形式で販売するゲーム専用機などのソフトを売るよりも手数料も少ないと最初は好評だった手数料が、スマホアプリ全盛の時代になると「高い」と言われ始め、エピックゲームズ社との裁判につながった。アップルは最初から広告などで利益を得る無料アプリの開発者からは手数料を取っていないし、中小開発者の手数料は15%に下げるなど改善を尽くしてきたが、エピックゲームズのような大手からの不満は消えなかった。

またアップルが問題と考える公序良俗に反するアプリの開発者もiPhoneで自社のアプリを提供できないことに不満を募らせており、そうしたことが今回の法律制定につながっている。

iPhoneのイメージ低下をよしとしていないアップル

法律の草案時から、アップルは一貫して統合設計を崩すことは、iPhone上のセキュリティーの安全性を下げることになり、それによりユーザーのプライバシーがリスクにさらされる可能性があると主張して議論を続けてきた。アップルはIT企業と言いながらも、ファッションブランドなどに近いブランド企業としての側面が大きいだけに、iPhoneユーザーが製品にどんな印象を持つかを何より大事に考えており、例えば質の悪い他社製品によってiPhoneのイメージが悪くなることをよしとしていないところがある。

そのため他社アプリストアで提供するアプリに関しても「公証」という形で、悪質なアプリではないかなどの基本の審査は行うという(同社にとっての利益が小さいにも関わらずだ)。ただし、これら他社アプリストアから入手したアプリで得る体験の品質に関しては一切責任を負わないという立場を明確にし、以下のような注意を発している。

「App Store以外でダウンロードされるアプリについては、App Reviewを通じてAppleが提供する保護と同等の保護対策が適用されることはなく、App Storeでは許可されない、詐欺や悪用、不正行為などを含むアプリや、不法、不快、または有害なコンテンツにユーザーをさらすアプリなどの新たなリスクをもたらします」
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