「インドネシア国産電車」安全を支える日本の技術 見えない部分で貢献、中国勢にない「強み」は何か
原氏は2000年のフコク入社当時、鉄道営業担当だったこともあり、インドネシア国産通勤車両の部品国産化に貢献したいという気持ちが強くあったという。現在はINKA、KCIへの直接の販売だけでなく、国営鋳物製造会社のPT Bataraと連結器緩衝材を開発中という。ローカルのゴム製品はへたりが早く、1~2年で壊れてしまうことも多く、ライフサイクルの長い同社製品への期待が高まる。
今回のINKA製通勤型車両案件で同社が納入したのは「軸箱支持ゴム」と呼ばれる部品だ。CLI-225型の台車は、日本の首都圏通勤電車にもよく見られる「軸はり式ボルスタレス台車」を採用しており、軸箱支持ゴムは軸箱と台車枠をつなぐ重要な装置である。
「上下左右前後の動きを拘束せずに車輪と台車枠との相互関係を正しい位置に保持します。走行中の振動を吸収し、快適な乗り心地にも貢献します」と話すのは同社の大久保直也R&Dマネージャー(取材当時)だ。この特性を持つゴムをINKAからの要求スペック、寸法に応じて独自の配合で設計し、製品に組み上げる。設計は日本サイドと相談し、現地で製造している。将来的には設計からFTRIで行うことを目指したいという。
外から見えるのはほんの一部
金具はインドネシア国内のローカルメーカー製で、これらを全てアッセンブリーした状態でINKAに納品している。INKAからの仕様、取り付け方法の違いにより、日本国内に納めている軸箱支持ゴムよりも部品点数が多く、これら金具を含めて5点から構成される。1台車あたり軸箱支持ゴムは4つあるため、12両編成16本分だと計1536個だ。なお、このほかに日本のフコク製品として、連結器緩衝材が連結器のサプライヤー経由で採用されている。
通常、自動車向けの製品でも開発から量産まで2年ほどかかるそうだが、今回は契約から初回納品まで8カ月だった。外部から調達する金具のサプライヤー選定や品質確保も考えれば異例の早さで、1536個全数の品質測定も実施した。
取材時も、自動車用部品が多数生産されている工場の一角で、軸箱支持ゴムが製造されていた。ゴムの配合、そして組み立てまで職人の手で一つひとつ生産されている。最後に、通常国内では取り付けないというアウターブロックと呼ばれる2つの金具を取り付け、測定器にかけた後、出荷となる。



















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