「インドネシア国産電車」安全を支える日本の技術 見えない部分で貢献、中国勢にない「強み」は何か
同社の強みは、中小企業だからこそできる提案力、唯一無二のはしごを1台からオーダーメイドで受け付けるという小回りのよさと寺本氏は説明する。月の出荷数は鉄道用でおよそ100台、その他で200台程度と決して大きな数ではない。生産は一つひとつ手作業で行っており、同社製の伸縮はしごのメンテナンスも引き受けている。
インドネシアの電車内に搭載された伸縮はしごは、乗客の目に触れることはほぼないに違いない。緊急用ゆえに使われないことが一番であり、万が一の避難時に乗客がはしごのメーカーのことなど考える余裕もないだろう。だが、まさに縁の下の力持ちとして乗客の安全を支えるものだ。
インドネシアの「国産化」を支える
一方、インドネシアにはINKA製車両の国産化率向上に寄与している日系メーカーがある。フコク東海ゴムインドネシア(FTRI)。工業用ゴム製品、金属・合成樹脂製品を中心に製造、販売するフコクのインドネシア現地法人である。フコクは、自動車のワイパー用ブレードラバーの年間生産本数がおよそ2億2000万本で世界シェア1位のメーカーだ。
自動車産業のイメージが強いメーカーだが、鉄道業界との関わりも深い。1964年の東海道新幹線の開業に際し、振動や騒音を低減する軌道パッドが採用され、当時の国鉄と本格的に取引が始まった。
近年では、車両の台車に使用される軸箱支持ゴム、軸バネ、防振ゴム、連結器のゴム緩衝器などを鉄道メーカー、鉄道事業者に納めている。台湾新幹線、中国高速鉄道など海外の鉄道車両にも採用されており、海外法人でも、インドネシアと中国で鉄道向け製品を生産している。
「創業の精神は『Yes, We Do !』です」と話すのはFTRIの代表取締役、原一郎氏だ。フコク創業者の河本栄一氏は神戸の煎餅屋の子息で、鉄板で焼くこと、そして配合が重要という点がゴムも同じだと考え起業したという。
FTRIは主にインドネシアにある日系自動車メーカー各社向けの防振ゴム、樹脂製品、シール製品の製造、販売を行っているが、日本製の鉄道車両が多数活躍するKCI向けに台車用防振ゴムを2022年に初めて納入した。



















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