「インドネシア国産電車」安全を支える日本の技術 見えない部分で貢献、中国勢にない「強み」は何か
緊急脱出時以外は運転台後ろに格納され、現物を見ることはほぼないであろうこの伸縮はしご。CLI-225型に搭載されているのと同じタイプの製品による約2mの高さからの実演では、わずか数秒ではしごが組み上がった。手すりも同時に組み上がるので、前向きの姿勢で安全に降りることができる。
耐荷重は100kgとしているが、非常時に乗客が殺到すれば一人ひとり降りるとも限らない。実際は3倍程度まで耐えられると寺本氏。たわみやぐらつきをほとんど感じない。収納時の大きさはわずか80cmで重さは約13kgと、簡単に持ち運びが可能だ。「上から下」に伸びる仕組みは特許を取得している。
鉄道進出のきっかけは「台湾新幹線」
同社はもともと建築現場用の伸縮はしごを製造しており、最初から鉄道向けの避難用はしごを手掛けていたわけではない。鉄道向け製品を開発したきっかけは、意外にも台湾新幹線だった。当時、台湾側が求める緊急避難要件を満たすはしごを製造できるメーカーがなかったようだと寺本氏は振り返る。近隣の鉄道車両メーカーが、「タケノコのようなはしごを作っている会社がある」と台湾側に紹介して納入が決まった。
従来、国内の新幹線に搭載されていた緊急避難用はしごは、慣れている人でも組み立てに10分以上を要していた。台湾新幹線での採用をきっかけに、国内の一部の新幹線にも採用され、徐々に広まっていったそうだ。海外ではサウジアラビア、シンガポール、エジプト、ベトナムにも納入実績がある。また、第三軌条の地下鉄用には、絶縁性のある特別仕様で生産している。
そもそも伸縮はしごを製造したきっかけは、京都の建築現場の周囲が重要文化財に囲まれていて大きなはしごを持ち込むことができず、急遽、現場で塩ビパイプを組み合わせたはしごを作ったことにさかのぼる。その後、「下から上」に伸びる伸縮はしごを開発、特許取得を試みたが、このときはアメリカから取り下げを求められてしまい、これは泣く泣く諦めたという。しかし、これが今の主力製品である「上から下」に伸びるはしごを生み出したわけだ。



















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