46歳で夫から逃げた——。76歳・団地ひとり暮らしの現在地《年金・月11万で人生を愉しむ生活術》

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「介護の仕事は、好きで選んだわけじゃない。でも、私にはそれしかできないと思ったから。例えばレジ打ちの仕事だったら、きっと焦ってミスを連発していたと思います。私は昔から数字に弱くて、臨機応変な対応ができないタイプなんです」

その後カルメンさんは試験に合格し、ケアマネジャーとして介護プランを立てる側になった。

「介護の現場はつらいこと、悲しいことも多かったです。利用者の方が亡くなられる場面に立ち会うこともあります。介護は周囲の人が思う以上に責任が重いし、体力的にも厳しい仕事。だからだんだん、現場を離れたくなったんです。

その後、介護福祉士資格とケアマネジャー資格を取って、ケアマネジャーになりました。数字には弱いけれど、文章を書くことは好き。だから文書作成が多いケアマネジャーの仕事は、続けられたのだと思います」

少しずつステップアップしながら、介護の分野で65歳まで働いた。

「実は、50代でタレントをしてみたり、発明家になるために商品開発をしたり……好きなことで生きる道を、模索したこともあったんですよ。でも結局、それで生きていくなんてできなくて。ずっと介護関係の仕事をやらざるを得なかった。でも、やりたいこともやってみたんだという、納得感はありますけどね。

それに、その“好きじゃない”介護の仕事で厚生年金を積んで、今は年金暮らしができているんです。だから、これはこれで、良かったのかもしれない」

現在のカルメンさんはひとり暮らしだ。娘ふたりはそれぞれ家庭を持ち、孫も生まれた。年金は2年間繰り下げ受給をして月11万円ほど。いろいろあった人生の行き着く先として、現在は都内の団地で、穏やかな毎日を過ごしている。

発明を紹介する記事
介護の現場で思いついた着脱が簡単なレインパンツを開発した(撮影:吉濱篤志)
昔の写真
発明家として雑誌やラジオでインタビューされたこともある。写真は出演の合間に撮った1枚(撮影:吉濱篤志)

年金11万円で暮らすのは難しくない

カルメンさんは年金だけで暮らすのは、それほど難しくないという。

「よくYouTubeで、年金関係の動画があるじゃないですか。年金受給者にインタビューしたりね。そういったものを見ると、”少な過ぎる”って文句を言っている人が多くて。でも動画を見ると、私よりもたくさん年金を貰っていたりするんですよね。

それで『金額は少ないながらも、ちゃんと生活しているよ』と伝えたくて、私もYouTubeを始めました。ちょっとした反骨精神ですね。登録者数が1000人以上になれば、収益化できるというメリットもあるんですけど、そこは二の次」

自分のための注意書き
自分のための注意書き。細かいところもきちんと整えて暮らしている(撮影:吉濱篤志)
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