「AI企業への投資は絶対に儲からない」と断言できる「11の理由」

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競馬である。

14日には、TBSの日曜夜のテレビドラマ「ザ・ロイヤルファミリー」も、最終回(第10回)を迎えるようだが、北海道の日高地方の牧場や馬が、あれでは、蒲田の町工場のような感じに受け止められてしまいそうだが、そうではない。

私がかつて応援していた早田牧場は、最大の社台グループに続く2番手であったが、日高だったし、社台グループのノーザンファーム躍進の主要要因の1つ、最強の外厩とも言われる「ノーザンファーム天栄」(福島)は、早田牧場が打倒社台のために渾身の力を込めて投資した施設であり、その無理がたたって破産し、その社台の手に渡ったのは壮絶なる皮肉だ。

だが、逆に言えば、そのくらい日高の牧場も力があったのである。いや、今でも有力牧場は、社台グループ以外は、日高に集中しており、7日に行われたチャンピオンズカップ(G1)で断然の1番人気となったナルカミは、UAEのシェイク・モハメド殿下が率いるダーレーグループのダーレー・ジャパンの生産馬であるが(もちろん所有もゴドルフィンで同グループ)、日高である。

「多様な馬」が育つための生産者育成が重要

2024年度の生産者を賞金獲得順に並べると、1位ノーザンファーム、2位社台ファームの2強がダントツであるのは事実だが、3位下河辺牧場、4位岡田スタッド、6位三嶋牧場、7位ビッグレッドファーム、8位ノースヒルズ、と2強以外はほぼすべて日高の生産牧場なのである。

したがって、産業政策的な焦点は、これらの2番手グループがどのように社台グループ(社台とノーザンは吉田家の兄弟の会社である)に対抗していくか、という問題なのである。

では、なぜ日高の馬が重要か、というと、血統を含め、馬づくりの仕方、考え方が異なるため、血の多様性を基盤として、すべての面で多様な馬が育つからである。かつてのメジロ牧場が独特の考え方で、独特の日本国内の血統を丁寧に積み重ねつつスピードを輸入牝馬で補いながら牝系を育てていき、メジロマックイーンを作り、ゴールドシップ、オルフェーヴルにつながったように、多様性は重要なのである。ちなみに、メジロ牧場は洞爺湖にあり、日高ではなかった。現在はレイクヴィラファームとして引き継がれたが、ノーザンファームと提携をしている。

「多様性はどこから生まれるか」、というのは深遠な問題なのでまた改めて議論したいが、血の多様化だけなら、社台グループの中で規模を生かして多様化すれば済むのであるが、結局は、配合を含め、人間の思い(あるいは思い込み)により支配されているので、経営者の多様性というのは必須だと私は考えている。そして、競馬の核となるのは、あくまで生産であり、ファン獲得には大成功を収めたJRA(日本中央競馬会)であるが(前回11月29日配信の記事「日本経済の未来は日本競馬の成功に学べば明るい」を参照)、生産者の育成も、小規模家族経営の牧場の保護だけでなく、戦略的に考えてほしい。

14日は、香港で多くのG1レースが行われ、日本馬も多数参戦している。ただし、香港競馬の世界的意義は、私はあまりないと考えている。なぜなら、香港では馬の生産は行われておらず、オーストラリア生産馬の購入が中心であり、大レースも芝の高額賞金を求める欧州勢と日本勢が香港馬と戦う構図にすぎないからである。

しかも、香港馬の多くは去勢されたセン馬(気が悪い馬を従順にすることができ、また肉体的老化が進みにくいので、長く競争生活を送れる、つまりレースで稼げる期間が長くなる)であり、種牡馬を選ぶ、血を残すという概念の薄い競馬サークルであるからである。そんな香港のセン馬たちに日本馬は負けてほしくない。全力で応援したい。

※ 次回の筆者は小幡績・慶応義塾大学大学院教授で、掲載は12月13日(土)の予定です(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
小幡 績 慶応義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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