その投資、「株主優待」にだまされてませんか? アイドル「握手券」と共通する意外な心理

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株主優待でさまざまな商品がもらえるのは、まさにアイドルのCDを購入することによって付随的についてくる握手券に似た特典と言っていいのではないでしょうか。

これ自体は、別に決して悪いことではありません。アイドルというのは音楽性だけではなく、その容姿や振る舞いも大きな魅力になっているわけであり、ファンとしては全人格的に応援したいからこそ、たくさんCDを買っていっぱい握手したいと思うのは当然です。

株式投資においても、値上がり益や配当だけではなく、その企業を長期にわたって応援し、かつその製品を愛用してあげようという株主にとっては、株主優待というのはいわば会社と自分とをつなぐ、ある種の絆のようなものと感じることだってあるでしょう。この場合、アイドルのファンも株主も、「応援団」という位置づけになります。

え! 株主優待で損する…?

ただ、アイドルグループを応援するのと株式投資をするのは、まったく意味が違います。株式に投資をするというのは、あくまでも企業価値を買うということが主体です。

優待だけに魅力を感じて、その会社の財務内容や成長力、利益水準などはいっさい考慮しないで買ってしまうと、株価の下落によって思わぬ大きな損を被るということにもなりかねません。いくら優待の商品をもらって喜んでいても、肝心の株価が下落したり配当金が減ったりしたのでは、何にもなりません。

もちろん、株主優待でもらう商品や優待券の価値を金銭に換算すると、トータルに考えた投資利回りが高くなるという場合もあります。ただ、それはあくまでもその会社の商品やサービスを利用した場合に限っての話ですから、別途支出が必要な場合があります。やはり、純粋に金銭として受け取る配当金とはやや意味が異なります。

株主優待は「投資の目的」ではなく、自社の株式を保有してくれる株主に対する、いわば会社からのお礼です。株主としても、優待による利得はあくまでもプラスアルファとして考えておくべきでしょう。

私も航空会社の株を保有していて、株主優待割引で搭乗していますが、これも優待だけを目的に購入したわけではありません。収益構造や今後の事業展開から考えて有望だと思ったので投資することを検討し、かつ株価が大きく下落して割安になったと判断したときに購入しています。

結果として優待券は送られてきていますが、これはあくまでも余禄です。仮に今後の業績見通しが悪化したり、利益成長性が低下するような場合には、優待があろうがなかろうが、関係なく売却することになるだろうと思います。

目に見える品物の魅力やわかりやすい利得に惑わされてしまい、気がつくと大きな損をしてしまったということにならないように、注意したいものです。

大江 英樹 経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表

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おおえ ひでき / Hideki Oe

大手証券会社で25年間にわたって個人の資産運用業務に従事。確定拠出年金ビジネスに携わってきた業界の草分け的存在。日本での導入第1号であるすかいらーくや、トヨタ自動車などの導入にあたりコンサルティングを担当。2003年から大手証券グループの確定拠出年金部長などを務める。独立後は「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるよう支援する」という信念のもと、経済やおカネの知識を伝える活動を行う。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書に『自分で年金をつくる最高の方法』(日本地域社会研究所)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)などがある。

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