このように、株主優待は株式投資の大きな楽しみのひとつであることは確かです。ただ、忘れてはならないのは、株主優待はあくまでも“おまけ”であって、本来の投資の目的にはなりえないということです。
株式投資の大原則は、その企業が将来にわたって生み出す利益に注目して投資するということです。利益が永続的に成長していくのであれば、企業価値が向上することになりますから、当然、株価も上がるでしょうし、配当金も増えるということになります。
株主優待も配当の一部と言えないことはありませんが、やはり付随的なものであり、「株主優待だけを目的に投資する」というのは本末転倒であるような気がします。
ところがやはり個人投資家にとっては、株主優待というのは大きな魅力を感じます。その理由は心理学でいう「満足化プロセス」にあります。何かの意志決定を行う際に、すべてにわたって完璧でなくても、その一部において強い満足感を得ることができれば、全体の満足度が高まるということを言います。
しかも株式というのは目に見えないもので、人は抽象化されたものを評価するのがとても苦手です。そこへ持ってきて具体的な商品や金券という目に見える利得を得られるため、とても強い満足感とお得感を感じることになるのです。
アイドルグループと株主優待
私は株主優待が大人気であることを見るにつけ、アイドルグループのCDを買う熱心なファンの姿がオーバーラップして見えます。本来、音楽ファンがCDを買うのは、その音楽を聴いて楽しみたいからのはずです。
つまり、音楽を聴く喜びというリターンを得るのが目的です。株式投資の場合は、すでにご説明したとおり、企業の成長を買うことによって将来にわたって高い配当や値上がりというリターンを得ることが目的です。
ところが最近のアイドルグループのCDを買う熱心なファンは、単に音楽を聴くことだけを目的にするのではなく、付随した楽しみで購入しているのが実情のようです。
たとえば、アイドルの序列を選ぶ“総選挙”と呼ばれるイベントへの投票権。これは、株式で言えば議決権に当たります。株数をたくさん持っているほど議決権が多くなるように、CDをたくさん買えば投票権が多く得られるからです。これによってお気に入りのアイドルをトップスターにすることができるという楽しみがあります。
また、握手券というものもあります。CDを買うとついてくる握手券によって、ライブやサイン会であこがれのアイドルと握手することができるという、ファンにとっては何ともたまらない喜びです。
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