画家を目指すも大学で挫折→30年後に「マツコロイド」で脚光 《自分そっくりアンドロイド》でおなじみ、名物ロボット学者が語る"気づき"の大切さ
――大阪大学大学院の教授でいらっしゃいますが、学生さんにも覚悟について教えられていますか。
石黒:学校はリスクなしで教えてもらえる環境なので難しいですね。リスクの取り方を教えるわけにもいかないけれど、社会に出る前に学ぶ必要はあると思います。まあでも、リスクを取るような人間ばかりだと、とんでもない世の中になっちゃいますよ。だから8割の人間は取らなくていいかもしれません。普通に安全に生きていい。
僕の話を聞いても真似しようとしないで、エンタメの1つだと思って聞いていただけたら。……でもそういうと、高飛車なことを言っていると思われるかもしれませんね。困るなあ。人の心は難しいものです。
「心」はどこにあるのか? ロボット研究の原点
――石黒さんのロボット研究の根っこには、「心とは何か」「人間とは何か」「自分とは何か」という根源的な問いがあると聞きました。
石黒:そこも、さきほどの気づきの話につながっています。幼少期、周囲の大人に「人の気持ちを考えろ」と言われて、「気持ちって何?」「人の気持ちを考えるってどうするの?」と思ったんです。それが気づくっていうことですよ。そんなふうに思わなかったですか?
――そうですね。
石黒:ね、気づいてないんですよね。みんな気づいてないんです。心のカタチを見たことあるんですか? 見たこともないのに、心という言葉を使っている。何も知らないのに。
――うっかり使っていましたね。軽率でした……。人の気持ちがわからないものだと気がついて、そこから「人間ってなんなのかな」という疑問が生まれたのですか?
石黒:そこはずっと変わらず持っている疑問です。ロボット研究の土台になってはいます。でも何をやっていたとしても、基盤になったと思います。だって、“自分”って、よくわからないじゃないですか。自分がどこにいるか、どこに意識があるかも指をさせないんですから。
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壮大なテーマに目を背けることなく、真摯に向き合ってこられた石黒さん。インタビュー後編では、ロボットやアンドロイドをつくりはじめて見えてきた「人間」や「心」についての話をお聞きします。
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