画家を目指すも大学で挫折→30年後に「マツコロイド」で脚光 《自分そっくりアンドロイド》でおなじみ、名物ロボット学者が語る"気づき"の大切さ
――芸術の才能がおありだったんですね。滋賀県高島市という自然豊かな地域のお生まれですが、家ではどんなふうなお子さんでしたか。
石黒:とにかく外で遊んでいました。近所の山で松茸が採れて、川では鮎が捕れて、カブトムシやクワガタも捕り放題の環境ですから。遊びには困らなかったですね。地面に開けた穴を順番に巡っていく「パチンコ」という遊びをしたり、メンコをしたり……。メンコは知ってます?
――自分のカードを地面に叩きつけて、他の人のカードがひっくり返ったら相手のカードを全部もらえる遊びですよね。
石黒:それでえげつないほど勝ってました。徹底的にトレーニングして、絶対に勝てるまでやるんですよ。なんか知らんけど、負けるのは絶対に嫌だったんですよね。ビー玉遊びでも、両手でビー玉を投げられるよう鍛え続けました。でも、やりすぎると必ず親が出てきて、その遊びが禁止になるんです。
――禁止になるまで徹底的に鍛えたんですね。
「記録」と「気づき」が、世界の見え方を変えた
石黒:小学3、4年生になると、今度は日記を書きはじめたんです。先生が「気のついたことを日記に書きましょう」って言ったから、『きのついたこと』というタイトルで書き始めて、それが面白くなって2年ぐらい続けました。全部で50冊か100冊か、もう数え切れない。ミカン箱1箱分は書きましたね。
――ものすごい量ですね。
石黒:毎日、思いついたことをノート1冊近く書いていましたから。小さな変化に目を留めていたんですね。今になって考えれば、それがすごくいいトレーニングになった気がします。
――なんのトレーニングになったのでしょうか。
石黒:考えたり、発見する、疑問や違和感に「気がつく」トレーニングです。研究の基本ですね。何かに気がつくためには、待っているんじゃなくて、自分で探しに行かないとならない。変わらない日常のなかで研究テーマを見つけるのが苦にならないのは、あの日記があったからかもしれません。
――気づきを探しに行く。
石黒:ええ。気づいて、「何が面白いか」を見つける力を磨くというか。ぼーっと生きていたら、何も気がつかないで一日が終わるじゃないですか。でも、「気づいたことを日記に書かないといけない」となったら、書くに値する面白いことに気がつこうとする。「面白いこと」って、見つける力がないと見つからないんですよ。



















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