《ミドルのための実践的戦略思考》「プロダクトライフサイクル」で読み解く大手旅行代理店の中堅営業担当・沢田の悩み
■自社の事業やサービスがPLCのどのステージにあるかを見極めるには?
まず、結論から言うと、自分たちのステージは「自動的に決められるものではなく、自分たちが意図を持って決めるもの」と理解しておくのが健全です。
どういうことでしょうか。
携帯電話を例に考えてみましょう。今現在、携帯電話のステージはPLC上のどこにあるのでしょうか? 日本において1億台以上が普及している現状を踏まえると、おそらく多くの人は「成熟期」と答えるでしょう。しかし、もう少し細かく見てみると全く様相は変わります。
例えばガラケーと言われるフィーチャーフォンはどうでしょうか。成熟期の後半、もしくは衰退期かもしれません。その逆にスマートフォンと言われる製品は、まだまだ成長期の段階でしょう。
更に細かく見ると、スマートフォンといっても一概には語れません。ブランドごとに見てみると、飛ぶ鳥を落とす勢いのiPhoneは成長期の真ん中かもしれませんが、その他のブランドでもはや成熟期や衰退期に陥ってしまったものもあるでしょう。
別な視野からも考えてみましょう。例えばフィーチャーフォンは成熟期~衰退期と申し上げましたが、これは日本という市場を前提に考えています。しかし中国内陸部やアフリカ諸国で見てみるとどうでしょう。これは今、爆発的に市場が伸びているところです。間違いなく成長期、いや、ひょっとしたら導入期のステージかもしれません。
つまり、PLCのステージは、どのセグメント、どのマーケットで見るかによって様相が全く変わってくるのです。
さらに、もう一つ大事な点は、「全ての製品やサービスは、必ずしも綺麗なS字カーブを描くわけではない」ということです。
コトラーの原典をあたると、そこには「反復型」、「波打ち型」、「ファド」などのいくつかのパターンが紹介されています。
「反復型」の典型例としては、機能追加によって市場が再成長を遂げていく白物家電などがあげられます。また、DRAMのように旧世代が落ち込みながら同時並行的に新世代が新たな需要を作っていくような製品は、「波打ち型」の傾向を見せます。
他方、急激に成長し、成熟を経ずに衰退を迎える「ファド」については、「何がファドになりうるのかを予想することは難しく、それを予想しえたとしてもそのファドがどれくらい長続きするのかを見極めるのは難しい」とコトラーは述べています。
つまり、成熟期にあっても、これから第二の成長期を迎える可能性はあるし、成長期にあっても、調子に乗っていたらすぐに市場が消えてしまう可能性もある、ということです。
ということはどういうことでしょうか?
結局のところ、「~期だから……」という考えは、後付けでしかなく、その枠組みで思考停止していることはむしろ逆効果である、ということなのです。つまり、「自分たちの業界をどう定義し、自分たちのステージをどう位置付け、更なる成長に向けてどんな戦略を打つべきか」というマインドが何よりも大事なのです。
これが、冒頭で「PLCのステージは、自動的に決められるものではなく、自分たちが意図を持って決めるもの」といったことの所以です。
では、そこまで理解した上で、例えば一旦停滞の傾向を見せ始めた市場において、更なる成長の打ち手はどうやって考えればいいのでしょうか。